10年以内の「段階的な非核化」を
検討していたトランプ政権

 ただ、実質的な中身は、むしろトランプ大統領の1時間以上にわたる12日の記者会見や、ポンペオ米国務長官の13日の記者団とのやりとりで明らかになったと筆者は感じる。

 トランプ大統領が会見での主な発言は、(1)「War Game(※米韓合同軍事演習の意味)を中断する、それは、われわれは交渉があるべき方向に進んでいないと感じない限り(中断し続ける)」、(2)「非核化には一定の時間がかかる」「主要な期間は第1の期間だ」「15年かかるという報道があるがそうは思わない」、(3)非核化の検証は、米国と国際的機関の「双方のコンビネーション」で行う、(4)「今日は大変なプロセスの始まりだ」、(5)「具体的な中身を合意文書に書き込めなかったのは、時間がなかったからだ」、といった内容だった。

 トランプ大統領は、非核化には時間がかかり、第1、第2といった何段階かの期間があることを示唆しており、これは「段階的な非核化」を意味しているといえる。

 首脳会談前、トランプ政権に近い関係者から筆者は、「政権内で検討されているのは、10年以内の段階的な非核化だ」と聞いていた。スケジュールははっきりしないものの、大統領会見から見えたのは、当初の想定に沿った合意内容だ。

 また、ポンペオ国務長官は首脳会談の翌日の13日、ソウルで記者団に「大幅な(major)軍縮は、トランプ大統領の任期である今後2年半の間におこなわれる」との考えを示した。

「大幅な」という表現がどの範囲の非核化を意味するのかは分からないが、米国側は北朝鮮の段階的な非核化を、まずはトランプ大統領の今の任期の2021年1月までをターゲットに進める意向と考えていいだろう。米国では今年11月に中間選挙を控えるだけに、動きが加速する可能性もある。

  ただ、米国にとって厳しかったのは、米朝首脳会談の前日、11日の会見で、ポンペオ国務長官が、「大事なのは『V(検証)』だ」と強調していたにもかかわらず、合意文書にはそれを書き込めなかったことだろう。そして、トランプ大統領が強い意欲を示していた、「朝鮮戦争の終結」を盛り込めなかったことも、米国が後退を余儀なくされた点といえる。