また、北朝鮮が継続的に核武装していく流れは、韓国や日本、そして台湾を核武装に向かわせ、北東アジアに“核の連鎖”が発生する引き金となりかねない。

 このような事態を回避するために、具体性や徹底性に欠けるとはいうものの、「トランプ大統領は北朝鮮に体制の保証を提供する約束をし、金委員長は朝鮮半島の完全な非核化について断固として揺るがない決意を確認した」(共同声明)ことの意義や価値は、中国の全体的国益に資する流れであると共産党指導部は読んだに違いない。

 6月12日、米朝首脳会談直後に中国政府が「外交部声明」と題して出した声明文は「この期間、朝鮮半島情勢に出現している重大で前向きな変化、特に米朝首脳会談が得た成果は中国側の期待に符合するものである」と指摘している。

中国が最も嫌がるシナリオは
朝鮮半島全体が“親米化”すること

 次に2つ目であるが、中国が米朝首脳会談を観察し、そこに関与していく過程での戦略は、今日経済貿易関係が悪化し、台湾問題でも不透明感が漂う米中関係が1つの土台になっているという点を指摘しておきたい。

 米国がトランプ政権になって以来“ダイナミック”に動いているように見える朝鮮半島情勢であるが、中国が最も嫌がるシナリオは、米中関係が悪化する中で、北朝鮮と韓国との関係、および米朝関係が劇的に改善し、その過程で北朝鮮が“親米化”し、結果的に(南北が統一するか、どのように統一するかという問題はさておき)朝鮮半島全体が“親米化”するというものであろう。

 こうなれば、中国にとって最大のライバルであり“戦略的競争相手”である米国の脅威が実質的に中国の国境まで迫ってくることになり、中国はこれまでとは比較にならないほどの安全保障的な恐怖に見舞われる事態に直面することになる。

 このような事態を回避すべく、中国は南北首脳会談、米朝首脳会談が準備・開催される中で習近平・金正恩による中朝首脳会談を2度アレンジした。習近平は上記で取り上げた1点目の目的を果たすべく金正恩の背中を押し、アクセルを踏ませつつも、いまだ若く、経験不足とされる金正恩が前のめりになりすぎないよう後ろで支え、ブレーキを利かせるべく働きかけた(もっとも、習近平に言われるまでもなく、金正恩にはアクセルとブレーキを原則性と柔軟性に基づいて踏み分ける意思と能力がそもそもあったのかもしれないが)。

 その1つの結晶が“中途半端な形”で発表された共同声明である。