ヒット商品の裏には必ず「インサイト」あり。消費者がモノを思わず買いたくなってしまう心のスイッチ――「インサイト」を活用し、新しい市場を切り拓く方法とは。国内での新規事業の創出だけでなく、インドや中国といった海外進出の際に実際に使われた方法もまとめた新刊『戦略インサイト』。本連載ではそのエッセンスや、マーケティングに関する最新トピックを解説していきます。

「ジーンズ出勤」の何が、良いのか?

オフィスでの服装は、どんどんカジュアル化が進んでいます。
1990年代の「カジュアルフライデー」に始まり、2000年代には「クールビズ」が浸透。最近では、「脱スーツ」に向けて、ジーンズやスニーカーでの出勤を認める動きが広がっています。IT系の企業など、服装の自由度がもともと高かったオフィスに加え、堅い業界の大企業でも取り入れるところが増えてきました。パナソニックは、本社をはじめ、国内の職場で(工場などを除く)、服装を自由化しました。

「スーツから脱することで、型や形式にはまった働き方から脱する」「服装を自由にすることで、自由に発言できる雰囲気をつくる」などが、その効果として期待されています。
また、服装をカジュアルにすると、スーツのときよりリラックスでき、アイデアを出しやすくなるとも言われています。

それらに加え、筆者が注目している効果に、「消費者になれる」があります。
日本の企業は、技術開発主導型が多いため、消費財メーカーであっても「作り手」目線になりがちです。「顧客志向」「お客さま目線」など、掛け声はいろいろあれども、実際のところは、自社の技術的な強みから製品を開発し、消費者の視点は後回し、ということが多かったのではないでしょうか。

商品企画会議で、テーブルの上に、自社商品と競合商品を並べる。各社、どんな特徴があって、何を「売り」にしているか、見ていく。そして、競合がこうだから、我が社はこうしよう、といった議論がなされてしまう。これこそが、まさに「作り手」目線です。
消費者にとっては違いがわからないような細かな点で差別化しようとしてしまったり、競合と同じ軸で技術的な優位性を競争してしまったり。いずれも、「消費者」のニーズや視点が抜け落ちてしまっています。