望まない妊娠を回避するための「緊急避妊薬」について緊急避妊薬は、あくまでも緊急的な手段として用いられる内服薬です(※写真はイメージ)

 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、望まない妊娠を回避するための「緊急避妊薬」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

 2015年に行われた厚生労働省「第15回出生動向基本調査」によると、不妊症の検査や治療を過去受けた、または現在受けている夫婦は52.1%だそうです。その一方で、この世に生を受ける前に、尊い命が失われている現状もあります。人工妊娠中絶です。

 人工妊娠中絶とは、「胎児が、母体外において、生命を保続することができない時期に、人工的に、胎児およびその付属物(胎盤、卵膜、臍帯、羊水)を母体外に排出することをいう」と、母体保護法第2条第2項に規定されています。年々、減少傾向にありますが、2016年度には16万8千件の人工妊娠中絶が行われました。
 
 厚生労働省による2016年の死因順位別死亡数の推計数によると、1位は悪性新生物、つまり、がんの37万4千件、2位は心疾患の19万3千件、3位は肺炎の11万4千件。人工妊娠中絶によって失われている命がいかに多いのか、わかっていただけるかと思います。ちなみに、年齢階級別にみた人工妊娠中絶実施率(女子人口千対)では、20~24歳が12.9%と最多です。

 そもそも人工妊娠中絶とは、週数によって大きく2つに分けられています。妊娠12週未満の場合、子宮内容物除去術を、また、妊娠12週から22週未満であれば、人工的に陣痛を起こし流産させる方法を取ります。どちらも、身体的にも精神的にも負担になると言わざるを得ません。