W杯決勝T進出の西野ジャパンに、決定的に足りないものとはW杯決勝トーナメント進出を決めたサッカー日本代表だが、課題も残った。西野ジャパンには「監督力」という強みがある一方で、やはりどうしても足りないものがある Photo:長田洋平/アフロスポーツ

「監督力」が頼もしい西野ジャパン
だが決定的に足りないものがある

 2018FIFAワールドカップ ロシア大会(以下、W杯)を戦っているサッカー日本代表が、危険な賭けに勝って見事にグループリーグを突破し、2大会ぶりに決勝トーナメントへの進出を果たした。まずは西野ジャパンに感謝の気持ちを伝えたい。前回の連載記事「日本が夢見るW杯グループリーグ突破に不可欠な3つの『監督力』」では、西野ジャパンが勝ち抜いていけるかどうかについて、(経営学の)リーダー論の観点から、3つのポイントが重要だと述べた。

 その後の経過を見る限り、西野朗監督はハリルホジッチ前監督時代に重用されていなかった新しい人材を登用し、組織を成長させるという点で、チームを生まれ変わらせる手腕を発揮した。また筆者は、短期でチームを覚醒させるためにはコミュニケーションの量が重要だと述べたが、代表選手たちの言葉から西野監督はそれを実行していたことが裏付けられている。初戦となるコロンビア戦での勝利に止まることなく、その先を見据えたゴールを設定し、チームを導いたという点でも、西野監督の「監督力」はグループリーグではいかんなく発揮されたのではないだろうか。

 今回の代表の戦い方は、日本として一番いい形であるかもしれない。しかし彼らには、決定的に足りないものが1つある。今回はそのことについて述べたい。

 W杯に出場した各国のチームの試合を見ていると、日本の試合では決して聞くことがない1つの言葉を、他国の試合でアナウンサーが口にすることが多い。それが「英雄」という言葉である。

 ポルトガル代表で言えばクリスティアーノ・ロナウド、アルゼンチン代表で言えばリオネル・メッシ。すべてのチームにいつの時代にもというわけではないが、欧州ないし南米の強豪チームには、時代ごとに必ず「圧倒的な英雄」が存在する。

 ないしは、その「英雄」という言葉はFIFAランキングが下位のチーム(と言っても、ほとんどのチームは日本よりも上位だが)でも耳にする。

 たとえば、グループリーグ敗退が決まったオーストラリアの最終戦の終盤で選手交代がなされた際に、「ここでオーストラリアの英雄、ケーヒルの投入です!」とアナウンサーが叫んだシーンが象徴的だ。W杯のグループリーグで敗れ去った様々なナショナルチームにおいても、それぞれの英雄が存在感を示し、そのプレーで国民を魅了している。