欧州車「人生最後の1台」には欧州車ばかりが選ばれています

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。

クルマづくりは日本のお家芸なのに
なぜ欧州車のようなプレミアムブランドがないのか

 数年前のことだ。

 久しぶりに、昔の職場の先輩たち数人と飲んだ。その席で、どんな流れだったかは忘れたが、自分が乗っているクルマの自慢話大会になった。

 私は基本的にクルマに関心がなく、「走れば何だっていい」くらいにしか考えていない。なのでその大会には参加できなかったのだが、よく意味が分からないウンチクの応酬が最高潮に達した時、とりわけクルマ好きの50代後半の先輩が、こんな質問を投げかけたのを覚えている。

「人生最後に乗りたいクルマを挙げるとしたら、何?」

 私には当然答えられるわけもなく、適当に相づちを打ちながら皆の話をただ聞いていた。

「ポルシェだな」「いや、フェラーリだよ」「マセラティ以外考えられない」など、先輩たちは口々にお気に入りのブランドを答えていく。

 その時、ふと不思議に思ったのは、日本車を挙げる先輩が一人もいなかったことだ。

 クルマづくりは日本のお家芸のはずだ。トヨタやホンダ、日産など世界に冠たるメーカーもたくさんある。それなのに、なぜ日本車はクルマ好きの彼らの心を捉えないのだろうか。

 本書『マツダがBMWを超える日』を読んで、その疑問の答えが分かったように思う。

 著者の山崎明氏は、1984年電通に入社。戦略プランナーとして30年以上にわたってトヨタ、レクサス、ソニー、BMW、MINIのマーケティング戦略やコミュニケーション戦略などに深く関わってきた。2017年に独立し、マーケティング/ブランディングコンサルタントとして活躍する人物だ。

 山崎氏はブランドには大きく分けて2種類があると指摘する。