Alexandria Sage and Salvador Rodriguez

[サンフランシスコ 3日 ロイター] - 米カリフォルニア州フレモントにある米電気自動車(EV)大手テスラ<TSLA.O>の組立工場では、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、エンジニアを怒鳴り散らしていた。

新型セダン「モデル3」の生産をフル回転で続けるため、テスラは他部署から従業員を動員。このため、主力セダン「モデルS」とスポーツ用多目的車(SUV)「モデルX」の生産が滞った。また、従業員は週末もシフトに入ることが義務付けられた。

テスラは、週5000台という「モデル3」の生産目標を達成するため、6月最終週にあらゆる手段を尽くした、と複数の従業員がロイターに語った。同モデルは、赤字続きのテスラを収益改善の軌道に乗せ、EV製造メーカーでも大量生産できることを証明するために不可欠だとみられている。

稼働時間を延長したり、他部署の従業員を動員したりすることなく、テスラが毎週のようにこの目標を達成できるかは、また別の問題だ。そして、その点を投資家は気にしている。

米国株式市場で、テスラの株価は7.2%下落、310.86ドルで3日の取引を終えた。

生産目標の一里塚を1日朝に達成するまで、マスクCEOは「モデル3」生産ラインの周りをうろうろ歩き回り、昼夜を問わず動く生産ラインがロボットのトラブルで遅れたり、停止したりすると、エンジニアたちを叱りつけていたと、従業員の1人は話した。

テスラは、主力工場の外に巨大なテントを作り、新しい生産ラインをわずか2週間で完成させた。組み立てラインの設計に数年かける自動車業界では、前例のないやり方だ。テスラによると、先週生産された「モデル3」の2割はこのテント内で製造されたという。

「私たちのラインから一日中動員して、モデル3に足りない人を補っては、生産ラインを動かし続けていた」と、「モデルS」の生産ラインで働く従業員は1日、ロイターに語った。

「5000台の目標を確実に達成するため、モデルSよりモデル3を優先して塗装していた。塗装部門は、台数に対応できていない」とこの従業員は語った。

「モデル3」に力を入れるあまり、「モデルS」の生産ラインは、塗装工程入りが予定より800台ほど遅れていたと、この従業員は話す。

「モデルS」と「モデルX」の生産ラインが遅れれば、両モデル合わせて10万台という2018年生産目標の達成が脅かされかねない。テスラは今年上半期、合計4万9489台を生産している。

テスラは、両モデルの生産に遅れは出ておらず、6月最終週は「モデル3」のほかに、この2つのモデル計1913台を生産したと説明する。また、同社の広報担当者は、「モデルS」と「モデルX」の生産ラインで働く従業員が、「モデル3」生産を自主的に手伝ったと述べた。

テスラによれば、「モデル3」の生産台数は第2・四半期に2万8578台で、昨年7月の生産開始以来、累計生産数は4万989台に達した。

先週の大掛かりな生産てこ入れは、従業員の就業規則の改定も伴った。週末シフト入りを義務付けた後、テスラは、週末勤務は最低でも1週間前に告知するという規則を撤回したと、従業員2人が明かした。

「マネジャーや監督責任者が、もし来なければ、会社の記録に残すと口頭で伝えて歩いていた」とテスラ従業員が先週ロイターに語った。

猛烈な生産ペースと長時間労働によって、燃え尽きてしまうのではないかと心配する従業員もいる。

ある従業員は、シフトの終了までではなく、その日の生産目標が達成されるまで、働き続けるよう指示されたと話す。

「明日から最大12時間働くつもりでいろと言われた」と、「モデルS」の生産ラインで働く従業員は2日、ロイターに語った。「今後は基本的に12時間勤務になる。週6日勤務になってしまう気がする」

テスラがネバダ州でパナソニックと共同運営するリチウムイオン電池工場「ギガファクトリー」の従業員は、生産目標達成のために、テスラは「どんな金額でも支払う」構えだと語った。テスラは5月、新たなバッテリー組み立てラインを欧州から貨物機で空輸し、ギガファクトリーに搬入している。

7月1日、日曜日の朝、テスラが自主目標として掲げた生産台数の達成期限から約5時間が経過した時点で、「モデル3」の組立ライン従業員から見えるところにあるモニターに、5000という数字が点滅した。生産5000台目となった「モデル3」のフロントガラスには、5000というサインが付けられていた。

テスラは2日、「モデル3」の一部生産を4日の米独立記念日に停止し、5日に生産再開すると発表。テスラは、8月までに「モデル3」の生産台数を週6000台に拡大する予定だ。

だが、長時間シフトに備えるよう指示された従業員は、生産ラインの作業員に負担を強いすぎれば、逆効果になりかねないと警告する。

高速で動く組立ラインによって、「従業員は次々と負傷することになり、(マスクCEOは)人手の問題に直面するだろう」とこの従業員は警鐘を鳴らす。「人が動ける速さには、限界がある」

(翻訳:山口香子、翻訳:下郡美紀)