自分だけは、人事や採用に関する判断を偏見なく行っている。そう思っているかもしれないが、本当にできているだろうか。本記事では、米軍における業績評価の中で、男性と女性に対して使われる表現の違いを定量調査した研究を紹介する。調査の結果、男性は「分析的」で、女性は「思いやりがある」という、ありがちな偏りが見られた。


 人事・採用に関する判断を、自分は偏見なく客観的に下している――人々はそう思いたがるものだ。

 では、同じような候補者が2人いたら、どちらを昇進させるだろうか。業績評価で「分析的」と見なされた人か、それとも「思いやりがある」と評価されたほうだろうか。

 また、これと対極の問題として、人員削減のために社員を解雇せねばならず、きわめて似ている2人の候補者がいるとしよう。「傲慢」と評価されたリーダーと、「能力が低い」と見なされたリーダーのどちらを解雇するだろうか。被評価者のリーダーとしての特性は、業績評価に大きな影響を及ぼす。

 我々は、あるユニークかつ興味深いデータセットを用いて、主観的な業績評価の際に、被評価者がどんな言葉で表現されているのかを調査した。すると予想どおり、業績評価で使われる言葉は、対男性と対女性で異なるという証拠が得られた。

 本調査では、米軍の大規模なデータセット(参加者4000人以上、評価数8万1000件)を分析し、客観的および主観的な業績評価を検証した。評価事項の中には、軍のリーダーシップ環境において、リーダーのパフォーマンスを評価する際に使われる、肯定的または否定的な特性が89項目含まれる。

 軍は、性別への偏見を検証する環境として興味深く有意義である。長らく伝統的に男性の職業であり、数十年にわたり、組織的な性差別や性別による分離を廃絶しようと努めてきたからだ。特に業績評価に関しては、軍が長きにわたって前提としているのは、人口統計的属性に関係なく平等な機会を提供するという、実力主義に基づく公平と正義である。

 トップダウンによる雇用機会均等方針の実施、社会的身分ではなく軍事階級で決まる階層的組織、加えて、昨今のあらゆる職業における包括的な性差別撤廃――これらは能力主義組織の特徴であり、業績評価での性別による偏見も少ないことが期待される。