中南米 2018年7月24日

コロンビアの「大麻フェア」で垣間見た、
日本とはまったく違う"大麻"との向き合い方コロンビア・大麻国際フェアレポート

改めて考える「大麻とはなにか」

 ところで、大麻やマリファナと聞いたとき、裏社会のアウトローや、麻薬中毒に溺れる犯罪者という悪のイメージを瞬時に浮かべるのが、通常の日本人の感覚だと思います。かくいう私もほんの数年前までは、芸能人の誰々がマリファナを所持して逮捕されるというニュースを見るたびに、「悪い道に陥ってしまった人」というレッテルを貼り、そのまま「悪」のイメージを抱いていました。
 
 これは、日本において、厚生労働省の「ダメ、絶対に」のスローガンのもとで、大麻(マリファナ)を完全なる麻薬として扱うという状況が作り出されてきたからです。
 
 私がこうした「悪」のイメージに疑問を持ったのは、数年前に米国のがん国立研究所が医療用大麻に強い抗がん作用があると発表したときでした。当時私は身近な人が何人かがんで亡くなっていたこともあり、がん治療の最前線に興味を持っていました。
 
 そしてそのニュースを知り、あらためて「大麻とはなにか」と考えるようになり、興味を持って調べるようになりました。そうしていくうちに、世界ではかなり多くの国が、医療用大麻を合法としていることが分かってきました。また、カナダだけでなく、他の国々でも、医療用だけでなく嗜好用大麻についても合法化する動きがあることを知りました。
 
「大麻」は本来、薬物のことを指すのではありません。「麻」でできた袋や衣類を見たことがある人は多いと思います。麻と言われるととても身近に聞こえますが、大麻と言われると少しドキッとしますよね。でも、この2つはまったく同じ植物のことなのです。
 
 大麻の陶酔作用は、中に含まれる成分に関係しています。大麻草=麻薬ではなく、正確には大麻の中の成分の一部が、一般の日本人が「麻薬」と理解しているものです。
 
 大麻に含まれる成分は「カンナビノイド」というもので、この成分の種類は100種類以上ありますが、その中の代表的なものがΔ9-THC(デルタ9-テトラヒドロカンナビノール)、Δ8-THC(デルタ8-テトラヒドロカンナビノール)、CBD(カンナビジオール)、CBN(カンナビノール)の4成分です。そして最初に説明したように、大麻草の種類の違いによって4成分の含有量の割合は異なり、その割合によって嗜好用、医療用、産業用に区分けされていくのです。
 
 大麻の陶酔作用に影響を及ぼすものは、Δ9-THCという成分ですが、WHO(世界保健機関)のデータによると、ヘロインやコカインとは異なり、アルコールなどの酒類やタバコと比較しても、精神的・肉体的依存度はかなり低いとのこと。また、この成分は、筋肉の痛みの緩和、吐き気や痙攣をおさえる、また食欲を増進させるのに効果があり、南米のインカ文明ではかつて、この大麻を手術などの際の「麻酔」として使っていました。
 
 日本でも2016年に、余命半年と宣告され医者にも見放された末期のがん患者が、最後の生きる手段として、食欲などを増進させるために大麻を所持および使用したことで逮捕されました。この患者が生存権を求める緊急避難のための無罪を主張して裁判を起こしたことがとても大きなニュースになりました(その後、被告は最終弁論を前に死去)。
 
 日本では苗字に「麻」の文字がつく人が多くいます。麻生という名前や、麻布などの地名がありますが、これらは麻の栽培が盛んな地域やそれらを家業としていた人たちからに由来するもの。我々日本人は縄文時代から大麻草とは深いつながりがあり、本来はとても身近なものでした。大麻の実は現在も七味唐辛子の材料ですし、戦前までは喘息の薬として、大麻が使用されていました。薬効成分としての使用は大変有益かつ使用用途も広かったのです。

 現在の日本の法律では、THC濃度が0.3%未満のものについては、産業用大麻として唯一生産が許可されています(嗜好用、医療用は許可されておらず、現在の法律では生産は違法)。日本国内で産業用大麻を栽培している地域はいくつかあり、その代表が栃木県です。ちょっと不思議に感じますが、「家の中などで隠れて大麻を栽培していた」というのがニュースなどで報道される一方で、地域産業として栽培している場所があるということです。

 産業用大麻の有用性は実はとても広く、麻の繊維からできる衣類はもちろん、紙のパルプからプラスティック、さらにオイルもとることが可能です。日本でもいくつかの代理店が美容や健康のために大麻のオイル製品を販売していますが、世界でも大麻からできる健康食品はとても人気の高い商品です。

 大麻は日本だけでなく、戦前は米国や欧州でも医薬品として重宝されていましたが、戦後その流れが大きく変わっていきます。それは、石油関連企業や医療業界が、燃料資源としても優秀で医療の効能に優れていた大麻を排除していく動きにでたからで、日本でも同じような流れをたどりました。石油業界や医療業界から政治的に排除され、「違法」というレッテルを貼られ、表舞台から消えたのが大麻なのです。
 
 もちろん、日本でも、大麻を悪のまま利用して儲けようとする人たちがいるのも事実ですし、使い方によっては、体の害になることは間違いありません。事実として合法になっている米国のコロラドやカリフォルニア州においても使用制限があり、大麻の使用を無制限にするこことは誰も勧めていません。青少年であればより正しい知識が必要になるでしょう。
 
 私個人としても大麻を勧めているわけでは絶対にありませんが、有用なものが政治的に排除されてきた歴史があるのであれば、当然、違う流れ、合法化の回帰が起きるのはなんら不思議でありません。先入観から排除するのは危険です。この機会に、大麻への正しい情報を知りたいと考え、勉強してくれる人が一人でも出てくればとうれしく思います。

(文・撮影/風間真治)

著者紹介:風間真治(かざま・しんじ)
商社の海外営業、中南米のドミニカ共和国駐在を経て独立。現在はカリブ海に浮かぶドミニカ共和国に住みながら、主に中南米諸国でこれから経済が成長していくような国々を頻繁に回り、未知なる客先を訪ね歩いては様々な新規事業の開拓に取り組む日々。中南米ではいくつかの国に会社を作り、貿易事業、港湾の通関業、不動産事業、インターネット事業、中古車販売業などを手がける。
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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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