重症心身障害児の普通学級は進むか

障害児と健常児を分けて教育することが障害児に対する差別や偏見になり、やまゆり事件の犯人のような「地域からの排除」につながる (写真はイメージです) PHOTO:PIXTA

神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」殺傷事件から、今日で2年になる。2012年から、国は障害者が積極的に地域に参加する「共生社会」に向けて動いていたはずだったが、そのさなかの犯人による重症心身障害児に対する言動は社会に大きな衝撃を与えた。「共生社会」への理解と取り組みは進んだのだろうか。(医療ジャーナリスト 福原麻希)

重症心身障害者が教室で過ごし
学校や地域になじんでいく

 障害のあるなしにかかわらず共に学び、暮らしを支えあう「共生社会」に向けて、学校が地域づくりを進めている例を紹介しよう。

 大阪府箕面市在住の巽康裕(たつみ・こうすけ)さん(13歳)は、生まれつき「ダンディーウォーカー症候群」に罹患しているため、脳性麻痺があり身体を自由に動かせない。さらに、1歳のときから日常的に人工呼吸器を必要としている。また、唾液の飲み込みや痰(たん)を吐き出す力が弱いため器械を使って吸引しなくてはならない。さらに、口から食事ができないため、腹部に穴を開けてチューブから栄養を取っている。

 康裕さんは重度の知的障害と身体障害が重複している重症心身障害児だが、小学生のときから車いすに乗って、地元の公立小学校へ通学してきた。特別支援学級の所属だったが、ほとんどの時間を普通学級で過ごした。会話はできないが、他の生徒と一緒に教室で授業を受け、看護師と鉛筆を握った。校外学習や運動会にも参加した。

 7年前の当時、全国的に重症心身障害児が地域の公立学校へ進学する例は少なかった。