中には、こんな項目もある。

「高プロを導入する全ての事業場に対して、労働準監督署は立ち入り調査を行い、法の趣旨に基づき、適用可否をきめ細かく確認し、必要な監督指導を行うこと」

 企業にとって労基署は、税務署と並ぶ「招かざる客」だろう。それが、高プロを導入したら必ず立ち入り調査に来てしまう可能性があるのだ。しかも「きめ細かく確認」するということは、労基署が調査したいときにいつでも入れるという事態になる。付帯決議の項目に法的な拘束力はないが、これだけ議論が続いてきた制度だけに、厚労省は調査を徹底すると見られている。

 そんなリスクを冒してまで、高プロを積極的に導入しようという企業があるのだろうか。「悪用をたくらむのなら別だが、普通に考えればないでしょう」(厚労省幹部)。制度創設を進めてきた厚労省の中ですらこうした声が上がる。

 高プロ制度は、労働者を保護するための労働時間規制を完全に外す、かつてない試みだ。「労働時間」という概念自体がなくなるため、「残業」も成立しなくなる。当然ながらどれだけ長時間働いても「残業代」は出なくなる。

 このため労働側は、「定額働かせ放題の制度」「過労死を助長する」と猛反発したが、安倍政権はそれを押し切って制度創設に踏み切った。

 それだけに、高プロにはさまざまな要件が課され、簡単には適用できない仕組みになった。

 まず、適用対象が狭い。年収は1075万円以上、業務は高度な専門職に限定される。さらに適用したとしても、高プロ社員に対して企業側が労働時間や仕事場所を指示することはできない。

 適用には、本人の同意が必要な上、同意した後に「やっぱりイヤ」と言われたら、企業は高プロの適用を外さなければならない。さまざまな健康確保措置を実施する義務も課せられる。こうしたルールを守らなければ、高プロ適用は無効になる。

「こんな制度を誰が使いますかね」と厚労省幹部が言い捨てるほど、厳しいハードルが課されているのである。