社員がだぶついているような企業では、こうした問題もあるのだろうが、高プロはこうした問題を解決するための制度ではない。

 成果も上げずにダラダラ残業するAさんのような社員は、制度が想定する「高度プロフェッショナル人材」とはかけ離れており、高プロを適用できないからだ。そもそも、こうした問題は、現行の労働時間規制の下でも人事異動で配置を変えたり、給与制度を見直して成果給を手厚くしたりといった対策が可能だ。

 日経新聞は少し前まで、高プロのことを「働いた時間ではなく成果に着目して支払う『脱時間給制度』」と説明してきたが、これも間違いだ。

 高プロは、労働基準法上の労働時間規制を外す制度であり、給与制度を変える話ではない。さすがに最近は、高プロを「高年収の一部専門職を労働時間規制から外す」と説明するようになったが、それでも「脱時間給制度」という言い換えは続けている。

「脱時間給」にこだわるのは、高プロを本音では“残業代泥棒対策”だと考えている経営者らと通じるものがある。

 高プロはそもそも、2014年に産業競争力会議で提言された「新たな労働時間制度」が原型だ。これが政府の「日本再興戦略」に盛り込まれ、その後、「高度プロフェッショナル制度」と名付けられた経緯がある。

 産業競争力会議の提言をまとめた中心人物が、経済同友会の代表幹事で同会議の民間議員を務めていた長谷川閑史氏。「多様で柔軟な働き方を可能にする」ことを目的に「労働時間と報酬のリンクを外す」といった内容だったが、年収要件を設けない方式も示されており、この時から、事実上の「残業代ゼロ」をめざす制度で、“残業代泥棒対策”の狙いがあった。

 仕組みを実際に考えたのは、経済同友会を中心とする財界と経産省だったとされる。

 財界の総本山である経団連はもともと年収要件を「400万円以上」として、対象を大幅に広げる主張をしていたし、中小企業の団体からも「(中小企業のために)もう少し多くの働き手が対象になる制度設計が必要だ」との意見が公然と出たりしたこともあった。

 高プロは2015年の国会に提出された労働基準法改正案に盛り込まれたものの、一度も審議されずにたなざらしにされた後、今国会に提出された働き方改革関連法案に再び盛り込まれた経緯がある。

 さすがに、今国会の議論では、経済界のこうした露骨な本音は影を潜めていたが、改革関連法案が国会で成立すると、本音を隠さない言動が目立ち始めた。