ジャイアントキリングこそ、高校野球の醍醐味印象に残った大番狂わせの試合は?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「ジャイアントキリング」という言葉を聞いたことがあるだろうか。英語で書くと「giant-killing」。「旧約聖書」に登場、羊飼いの少年ダビデが巨人ゴリアテ兵士を倒したことに因む言葉で、「大番狂わせ」のことを指す。

 元々はサッカー界で使われる言葉で、日本では、ツジトモ作画・綱本将也原案のサッカー漫画のタイトルとなったことで広く知られるようになった。

 そもそも、サッカーでは番狂わせは少なく、格下のチームが格上のチームを倒すことはあまりない(今年のW杯に関してはジャイアントキリングが多いというかもしれないが)。そのため、明らかに弱いチームが強豪を倒すことは衝撃的であり、そこから「ジャイアントキリング」という言葉が生まれたものだ。

 一方、野球は比較的番狂わせの多いスポーツである。とはいえ、近年甲子園に出てくるようなチームでは選手層も厚く、全国制覇を狙っている高校やプロ入りを見据えて研鑽を積んでいる選手と、あくまで学校の部活の延長戦上で戦っている選手との間の実力の差は大きく、こうした全国的な強豪校が無名校に敗れることはめったにない。

 なかでも、その違いが大きく現れるのは最終回の攻防である。無名校が全国的な強豪校をリードしたまま最終回まで追い詰めることはしばしば見られる。ところが、最終回を迎えると強豪校は猛反撃を開始、動揺した守備陣の隙をついて、同点あるいは逆転してしまうことは珍しくない。それでも、この試練を乗り越えて見事にジャイアントキリングを達成する高校もある。

近年のジャイアントキリング
智弁和歌山に勝ったのはあの高校

 近年の夏の甲子園で記憶に新しいのが、2015年夏の三重の津商と和歌山の智弁和歌山高の対戦だ。津商はこの大会が春夏通じて初出場。過去、県大会決勝に進んだのはわずか2回しかなく、全国的には全く無名校だった。しかも、傑出した選手はおらず、いわばごく普通の県立高校である。