サブプライムショックに端を発するドル安が続けば、ドルの一極基軸通貨体制は今後どうなるのか? 元財務官の内海孚氏は、「ドル安が放置されればユーロも基軸通貨になる」と明言する。(聞き手:『週刊ダイヤモンド』 竹田孝洋)

内海孚
うつみ・まこと/1957年東京大学法学部卒業後、旧大蔵省(現財務省)入省。86年国際金融局長、89年から91年まで財務官。92年慶應義塾大学教授。2001年国際金融情報センター理事長。04年から日本格付研究所社長。(撮影:加藤昌人)

――ユーロはドルと並ぶ基軸通貨になれるのか?

 ユーロはドルに対抗しうる基軸通貨として育ってきている。ユーロ以外の欧州諸国、アフリカ諸国がユーロ圏に組み込まれつつある。金融政策をつかさどるECB(欧州中央銀行)もFRB(米連邦準備制度理事会)に劣らない信用を勝ち得ている。外貨準備や国際決済に利用される割合は、ドルが上回っているものの、ユーロの比率も上昇している。いずれ肩を並べるときがくるだろう。

――ユーロの台頭は国際通貨制度にどういう影響を与えるか?

 為替の安定にはプラスに働くと考えている。現在のドル一極通貨体制には米国に政策のタガをはめられないという欠陥がある。ブレトンウッズ体制では、ドルに対する固定相場制を採用し、米国は各国の中央銀行から請求があれば1ドル=35オンスのレートで金と交換しなければならなかった。

 そこで、米国はドルの価値を維持するために貿易収支や財政収支の赤字をふくらませないよう政策の舵取りをする必要があった。しかし1973年以降、米国はドルとの兌を停止した。ドルを金に交換する必要がなくなった米国は、自由に財政・貿易政策を採ることができるようになったのだ。その結果政策が放漫になり、財政収支、経常収支の赤字が大きく膨らんでしまった。