静岡県富士市にある小さな企業相談所が、いま日本中の中小企業から注目を集めています。「富士市産業支援センター(通称f-Biz/エフビズ)」の支援を受けた多くの会社が、次々と新たな商品やサービスを開発し、目覚ましい成功を収めているのです。経営不振の町工場から、ほとんど仕事のない個人事業主まで、見事に蘇っていくのです。
その秘密は、f-Bizセンター長・小出宗昭さんの独自の戦略にあります。その戦略とは何か?このたび、ダイヤモンド社から『御社の「売り」を見つけなさい!』を上梓した小出さんが、豊富な実例を示しながら、企業再生のポイントをわかりやすく解説していきます。

あなたの「趣味」もオンリーワンにつながる

 富士産業支援センターf-Bizには、珍しいスキルを持った方など、じつに多種多様なキャリア・スキルを持つ方々が相談に訪れます。「よねち」こと米山栞合さんもその一人で、彼女は地元にある短大の音楽科を卒業したばかりで、「オーボエ演奏家として独立したい」と言って相談に来られました。

 通常、音大卒だと、演奏家になるか教員や音楽教室講師の道に進むことが考えられます。ですが、それで生計を立てていけるレベルを目指すとなると、なかなか厳しいというのが現実でしょう。

 それでも私どもでは、否定や指摘を絶対にせず相談者の話にとことん耳を傾け、その中から強みを発見していきます。一見、難題のようにも思える案件ですが、やり方は変わりません。

 何度目かの相談の際、対応していたアドバイザーが、彼女にとてもユニークな趣味があることを見つけ出しました。中学生の頃からアニメの登場人物にふんするコスプレを楽しんでいるというのです。じつは、これこそが彼女の強みだったのです。

 後日、f-Bizのある建物の屋上に出て、富士山をバックにコスプレ姿でアニメソングを演奏する彼女を動画におさめました。

 それを「コスプレしながらオーボエ吹いてみた」と題してツイッターで動画投稿を開始したところ、香港のイベント主催者の目に留まり、出演オファーが舞い込んだのです。

 ちなみに、富士山をバックにしたのは、世界を舞台に!という思いが込められていたのですが、本当にいきなり世界デビューが決定してしまうとは、私どもも想定外でした。

 世界でただ一人のコスプレオーボエプレーヤーの彼女、その後は、音楽教室での講師活動のほか、地元での単独ライブ、大学での講義等々、活動の幅を広げていきました。

 そうして活動を続けていると、アニメの世界だけではないところでの知名度も上がっていき、現在はクラシック音楽界からのオファーも入るようになりました。

 認知度があるということは、開催側としては集客率のアップが狙えるわけです。同じような技術を持つ人は他にも少なくないはずです。しかし、コスプレ演奏家というオンリーワンだからこそ彼女が選ばれるのです。

 こうして彼女は今、演奏会用のドレスをまとい、時にはソロ奏者として、クラシックファンも魅了しています。