「週刊ダイヤモンド」9月1日号の第1特集は「自動車・電機・IT 40年で完成した日中逆転の全経緯」より、上海を拠点とする大手経済メディア「第一財経」による現地報道から、膨張する中国の経済・産業の様子をお伝えする。記事一覧はこちら。今や上海の嘉定区と言えば、人々は国内外に名を轟かせる自動車産業を連想するだろう。改革開放から40年、自動車産業における対外開放の先例として中国の自動車産業は嘉定区から始まり、この464.2平方kmの情熱の地で徐々に発展を遂げ、規模を拡大し、今では嘉定区だけでなく、上海の有力産業ともなっている。その嘉定区は現在、世界的自動車産業基地になるべく、さらなる取り組みを始めている。(俞立厳 第一財経記者)

世界レベルの産業集積地を目指す嘉定区自動車産業の集積地・上海の嘉定区は、次世代車のイノベーションの世界的な発信地を目指している(写真はイメージ) Photo:PIXTA

三段階の発展で、世界的自動車産業基地へと加速邁進

「私は安徽省生まれの起業家であり、家は北京にあれども、上海を会社全体の根本であり、ベースであると捉えています。」

 中国の新規自動車メーカーの代表的人物であるNIO(蔚来汽車)創始者兼社長の李斌氏は感慨深く語った。NIOは世界をリードするスマートEVメーカーで、世界40の国や地域に6000名の国内外の社員を有する民間企業でありながら、NIOはその本社を上海市嘉定区に置くのみならず、その完成車工場も将来的に嘉定区へと移転する計画である。

 現在、嘉定区には国内外の各方面の自動車メーカーや自動車関連企業が集結している。2017年の嘉定区の自動車産業の生産額は4300億元を超え、2018年1~4月の嘉定区全体での自動車産業生産額は1554.6億元と、同期比で13.4%増加し、右肩上がりの勢いにある。

 目下、嘉定区には上海フォルクスワーゲンなど完成車メーカーや部品メーカーが300社以上あり、6つの国家級公共サービスプラットフォーム、100社以上の研究開発機構、自動車の専門人材を3万人以上有しており、中国の単独都市として自動車産業は最大規模、自動車関連のサプライチェーンが最も完備され、産業の集積が最も顕著な街である。2016年の中国自動車産業基地競争力ランキングでも、嘉定区は総合競争力0.975と全国1位に輝いている。

 嘉定区の成功は歴任の区(県)共産党委員会や区(県)政府が自動車産業の発展を非常に重視したからだ。ゼロから構築を始め、一代一代、改革開放政策のもと、産業基盤から、付随的機能、技術サポート、人材保障といった長所を常に活かし、嘉定区の人々全体が他に先駆けてチャレンジするという起業精神と挫折にくじけない気概にあふれていた。そして確実に事に取り組む堅実な気風で、自動車産業のDNAを深く嘉定区の発展の流れに刻みこんできた。