従来の「中央特別自由席」は、球場から出たお客の数に応じて、追加販売を行っていた。またテレビに映るような良席なら、空いたとしても別の場所からファンが移動して来てすぐ埋まっていた。しかし今は指定化により、良席が「死にチケット」になっている。

 当日販売のチケットを求めて、深夜から甲子園球場前に大行列が発生するのは、5、6年前から起こっている現象だ。前売り券を増やしたことで行列が大幅に解消される期待もあったが、今大会を見ると、実際には前売り券を持っていないファンの負荷がより大きくなっている。当日券の減少で入手の競争率が上がり、「早めに並ぶ」傾向がエスカレートしているようだ。

 買えなかったファンがそのまま球場外に残り、1・3塁特別自由席、アルプス席、外野自由席などの再販売を長い行列で待っている様子は筆者もたびたび見かけた。

 観戦希望者が増える土日は特に大変で、18日の準々決勝は午前5時40分に満員通知が出ている。第1試合の開始は午前8時なので、その2時間20分前に完売していたことになる。深夜1時から並んだファンでさえ、1・3塁側の内野特別自由席を買えなかったと聞く。私の友人は外野自由席を辛うじて入手したが、大阪市内のホテルをタクシーで朝4時に出発していた。500円の外野自由席を手に入れるために、それだけの時間と、数千円の交通費を費やしているのだ。

ネットオークションに定価以上の価格で出回るチケット

 全てのチケットを前売り化すれば行列をなくせるという提案にも一理あるのだが、本当に必要な人がチケットを手に入れられない状況は、より強まるだろう。高校野球の前売り券購入は、サッカー日本代表のチケットを買うのと意味が違う。カードが決まるのは大会のわずか3日前で、雨による順延もある。「特定のチームを見たい」「注目選手を見たい」というニーズに応えるなら、当日券を用意するしかない。

 特に準決勝、決勝戦となれば「地元高校を応援したい」というニーズが高まる。金足農業が快進撃を見せた今夏なら「いくら払ってでも決勝戦を見たい」という秋田県人は多かったはずで、少なくともそういう人に向けた枠は確保しておくべきだ。

 どんな販売方法にも、メリットとデメリットがある。今までは午前5時、6時に並べば中央特別席も入手可能だったし、カードや勝ち上がりを確認してから買うことが一般的だった。しかし行列が長大化して近隣住民の生活に影響し、警備の負担が大きいという限界状態だったため、販売方法の変更が決まった。