ただ今回の変更はファンの間での評判が、どうやら事前の想定以上に悪い。必要な人に届けるというマッチングができていないからだ。

 チケットを購入できた一見幸運なファンも、おそらく二次流通で入手している例が多い。球場周辺でいわゆるダフ屋の姿は見なかったが、ネットオークションを探せばチケットは豊富に出品されている。グラウンドの近さや曜日といった条件で「相場」は変わるが、中央特別指定席が5000円以下で取引されている例は見当たらなかった。

 日本高校野球連盟は公式サイトで「営利目的の入場券の転売は、固く禁止しています」と呼びかけているが、それも焼け石に水だった。おおよその感覚だが、定価2800円の席が平均1万円前後で取引されていた。

 マッチングの失敗がはっきり分かる実例を、私は今回の甲子園大会で目撃した。ある日の第2試合の6回表、ユニフォーム姿の少年たちが中央特別席の日差しの当たらない通路に佇んでいた。そこに指導者らしい男性が現れ、彼らを説得し始める。

「みんな頑張って座っているんだから戻りなさい」

 テレビ中継に映り込むネット裏の一角は、「ドリームシート」と称され、2016年夏から全日本軟式野球連盟の選手を招待する場所になっている。しかし野球が好きで、普段から鍛えている彼らでさえ、炎天下で試合を見続ければうんざりする。全国中継に晒されるとなれば、真面目に見ている姿勢を維持しなければならず、気持ちも休まらない。指導者には「レベルの高い野球を良い場所で見てほしい」という思いがあるのだろう。ただそれは大人の一方的な思いで、彼らはストレスに耐えていた。

 試合を見たくない子どもたちが我慢して座っている一方で、試合を見たくて6時間、7時間と並んでいるファンがチケットを手に入れられない――。そんな現状はどう考えても理不尽だ。数十席程度の一般開放で需給が大きく改善されるわけではないが、指定席化によって「同じグループが大会期間中テレビに映り続ける」という懸念がなくなった今は、ドリームシートも廃止するべきだろう。