年間、相当数の講演会をこなすので、講演会場で多くの方々と出会う。海外出張も多いから、旅の途中、飛行機や列車などの交通機関や、空港や駅の待合室でも多くの方々と挨拶を交わす。その短い接触が後に花を咲かせた出会いも結構ある。

上海の浦東空港で
後ろから追いかけてきた女性

 先日、うちの事務所が東京で開催した安徽省旅遊局の関係者たちとの座談会で、山口県宇部市の久保田后子(きみこ)市長が、事前に丁寧に用意した中国語のプレゼン資料で宇部市を紹介し、インバウンド(外国→日本)事業を推進する意欲を見せた。特にかつて公害が深刻だった町から環境保護先進地域へ見事に変身した歴史への回顧、彫刻と花の常盤公園などについての紹介が、安徽省側にかなりいい印象を与えた。

 実は、久保田市長との出会いも旅の途中だった。2年前の2010年の5月、河南省での訪問を終えた私は、上海の浦東空港を経由して日本に帰ろうとした。その浦東空港で日本航空の社員に案内されて、空港内のラウンジまで移動していたところ、後ろから追いかけてきた女性に声をかけられ、名刺を交換した。それが久保田市長との出会いだった。

 空港で立ったままで交わした会話そのものは短かったが、地方経済を振興させ、ビジネス分野でも中国の地方都市と、いろいろ内容の伴う交流をしたいという久保田市長の熱い気持ちが伝わってきた。私にできることなら喜んでお手伝いすると約束し、別れた。

 後に、私はコラムのなかで、そのことを取り上げ、「山口県内では初めての女性市長らしいそのパワフルな行動力に感心させられた」と感想を書いた。

 私たちの会話を傍らで静かに聞いていた日本航空の女性社員も、その情熱に押されたようで、ずっと微笑みながら敬意を込めた目で久保田市長を見つめていた。以来、宇部市のために私にできることは何だろうか、とずっと考え、そのチャンスをうかがうようになった。安徽省との座談会に参加を誘ったのもそのためだった。