2年半もの空白

 野田首相は4月末、初めての米国への公式訪問を行う。民主党政権になって初めてだから、2年半もの間、日本の首相が公式に同盟国を訪問できなかったことになる。

 この意外な事実を知ったのは、3月に私がワシントンを訪問した時である。

 米国の老舗のシンクタンクでフォーリンアフェアーズを発行する、「外交問題評議会(CFR)」が呼び掛け、英、仏、独、露、中、韓、豪、ブラジル、南アフリカなど世界19ヵ国のシンクタンク20機関が参加し、「カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)」が3月12日に発足した。

 国際社会が直面する課題や脅威について、世界に強い影響力を持つシンクタンクが集まり、解決策を探り、世界に公表する。その設立メンバーに日本から選ばれたのが、「言論NPO」だった。

 ワシントンでの設立総会に参加した私は、2日間のCoCの会議の最中、世界のシンクタンクだけではなく、ブルッキングス、ヘリテージ、CSIS、アメリカンエンタープライズなど、アメリカの有力なシンクタンクのアジアの代表らとも議論を重ねた。

 その際に、偶然に出会った日本政府の友人から、首相の訪米の調整で苦労していることを聞かされた。

 実は、私がワシントンを訪問するのは、今回が初めてである。別にアメリカが、私の関心の外にあったわけではない。

 私自身は8年前から行ってきた中国との民間対話を、アメリカを巻き込んだマルチの対話にどう発展させるべきか、この1年ずっと考えていた。 世界はアジアを軸に変化を強めている。世界の関心は台頭する中国に向かい、アメリカもアジア重視に転換した。そして、軍事面では不透明さを抱えたまま拡大する中国との間で、新しい緊張関係が生まれ始めている。