「有能さ」を褒めてはいけない!
その理由は?

 ここでもう1つ、褒める際のコツを紹介しておきたい。それは「有能さ」ではなく、「姿勢」を褒めることだ。

 褒められることが自信になり、モチベーションが高まると一般的に考えられているが、褒め方次第では一概にそうとも言えないということは先ほど述べた。

 ここで注目したいのは、褒められることでかえって消極的になることを証明した心理学実験だ。

 心理学者ミュラーとドゥエックは、褒め方によってどのような効果の違いがあるかについての実験を行った。まずテストをやらせた。テスト終了後に、被験者は優秀な成績だった、少なくとも80%は正解だったと伝えられた。その際、3つの条件に振り分けられた。

 第1条件…こんなに成績が良かったのはまさに「頭が良い証拠だ」と言われた。
 第2条件…特に何も言われなかった。
 第3条件…こんなに成績が良かったのは「一所懸命頑張ったからだ」と言われた。

 つまり、第1条件では「能力が高いから」良い成績が取れたと思い込まされ、第3条件では「努力したから」良い成績が取れたと思い込まされた。

 その後で、これからやってもらうことになっている2種類のテストの特徴を説明し、「どちらのテストをやってみたいか」と尋ねた。
 
 一方は、あまり難しくなくて簡単に解けそうなもので、これを選べば、良い成績を取って自分の頭の良さを示せる可能性が高い。

 もう一方は、難しくて簡単に解けそうもないもので、これを選ぶと、良い成績を取って自分の頭の良さを示すことはできないかもしれないが、チャレンジのしがいはある。

 その結果、褒められ方によって選び方に顕著な違いが見られたのだ。

 第1条件の「頭が良い」と褒められた者のうち67%が簡単な課題の方を選んだ。
 第2条件の特に何も言われなかった者は、45%とほぼ半数が簡単な課題を選んだ。
 第3条件の「頑張り」を褒められた者のうち、簡単な課題を選んだ者は8%しかおらず、92%が難しい方を選んだ。

 このように、能力の高さを褒められた者と、努力したことを褒められた者では、正反対の結果を示したのである。

 以上から言えるのは、褒めることがモチベーションに与える影響は、褒め方によって大きく異なってくるということだ。