サービス残業の実態を解明、タダ働きが年間約50万円の業界とは?日本企業では、残業手当がつかない「サービス残業」の多さが長らく問題視されてきた。この度、正確な把握が極めて難しいその実態を、「残業マップ」によって明らかにした Photo:PIXTA

サービス残業の意外な実態
本当に多い「業種」「職種」は?

 日本企業の働き方の特色として、残業手当がつかない労働時間、いわゆる「サービス残業」の多さは長く指摘され続けてきました。一方で、サービス残業時間は、正確な把握が極めて難しいデータとしても知られています。

 まず、企業の勤怠管理には反映されません。多くの公的な統計データにも反映されません。多くの研究者は、企業が回答する厚生労働省の「毎月勤労統計」と個人が回答する総務省の「労働力調査」の差を見る、という苦肉の策とも言える手法で、サービス残業時間の把握を代替しています。

 そこでパーソル総合研究所と中原淳・立教大学経営学部教授の共同調査では、サービス残業時間を「残業手当がつかない労働時間」と定義し、管理職ではないメンバー層の従業員を対象に計1万人人の大規模な定量調査を行い、直接的にサービス残業時間を回答してもらうかたちでその実数を把握しました。本稿では、その結果を紹介しつつ、議論していきたいと思います。

 まずは、サービス残業に限らず、長時間労働が多い業種・職種がどこか、という実態から見てみましょう。以下、調査結果をランキングでまとめました。

 業種から見ると、メンバー層の平均残業時間の上位は、「運輸・郵便」「建設」「情報通信」と、よくメディアでも取り上げられることの多い業種が入ります。このあたりは、月平均30時間以上残業する従業員が軒並み3割を超えてくる業種です。

 職種を見ると、世間で話題になることの多い「配送・物流」「専門職」「IT技術・クリエイティブ職」が上位に入ります。高度なスキルを必要とし、業務の工夫の余地の大きい職種と、人手不足が深刻な職種がランクインしています。