経営×ソーシャル
識者に聞く ソーシャルメディア進化論
2018年9月25日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役 兼 最高経営責任者]

「日本のインターネットの父」村井教授が語る
インターネットの進化が「生物的」な理由

【村井純氏×武田隆氏対談1】

マイクロソフトが「Windows 95」をリリースした1995年ごろを境に、インターネットは私たちの社会にも広く浸透した。その広まりは「爆発的」とも言えるほどで、たとえば日本国内だけを見ても、2000年にはわずか4708万人だったインターネット利用者数(人口普及率37.1%)は、その15年後の2015年には1億46万人(同83.0%)へと驚異的な伸びを示している(総務省「通信利用動向調査」)。では、インターネットがこれほどのスピードで浸透した理由とは何だったのか。1980年代から日本国内におけるインターネットの先駆けとなった大学間ネットワーク「JUNET」設立を主導するなどインターネットの技術基盤づくりに携わり、「日本のインターネットの父」と呼ばれる慶應義塾大学の村井純教授に、インターネット発展の背景を聞いた。

早くからインターネットの
インフラが整っていたSFC

村井純(むらい・じゅん)
慶應義塾大学環境情報学部教授/大学院政策・メディア研究科委員長 工学博士(慶應義塾大学・1987年取得) 1984年日本初のネットワーク間接続「JUNET」を設立。1988年インターネット研究コンソーシアムWIDEプロジェクトを発足させ、インターネット網の整備、普及に尽力。初期インターネットを、日本語をはじめとする多言語対応へと導く。内閣高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)有識者本部員、内閣サイバーセキュリティセンターサイバーセキュリティ戦略本部本部員、IoT推進コンソーシアム会長他、各省庁委員会の主査や委員などを多数務め、国際学会等でも活動。2013年「インターネットの殿堂(パイオニア部門)」入りを果たす。「日本のインターネットの父」として知られる。 著書に『インターネット』(岩波新書)、『角川インターネット講座〈第1巻〉 インターネットの基礎 情報革命を支えるインフラストラクチャー』(角川学芸出版)他多数。

武田隆(以下、武田) 本日は、「日本のインターネットの父」と呼ばれる村井先生にお会いできて、非常に感激しております。私は1994年にコンピュータを使ったマルチメディアの創作をし始めました。そのあとインターネットに触れて衝撃を受け、そのまま学生ベンチャーとして1996年に起業したんです。

村井純(以下、村井) ではかなり初期の頃ですね。まだ「インターネット」という言葉もそれほど認知されていなかった時代でした。

武田 ええ、まさにインターネットの黎明期です。

村井 ニフティやPC-VANなどの通信企業が、個人向けのインターネット接続サービスを始めたのがちょうど1994年頃。1995年にはインターネット接続機能が搭載されたWindows95が発売されましたね。そんななか、SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)では1990年の創立時からいち早くインターネットのインフラを整えていました。

武田 起業仲間にSFCの2期生がいたんです。彼に誘われて、1995年にSFCを訪問した時のことは今でも鮮明に覚えています。まだ開設されて間もないピカピカのキャンパスを歩いて建物に着くと、自動ドアが音もなく開き、何台ものワークステーションが整然と並んでいて……。

 私が当時通っていた大学はまだ自動ドアすらありませんでしたから(笑)、まるで『2001年宇宙の旅』に出てくる「白い部屋」のような未来感を覚えました。それに、回線の速さも当時としては驚異的でしたよね。

村井 ここSFCで日本全体をつないでいましたからね(笑)。1995年といえば、僕の新書『インターネット』が出版されたのも同じ年でした。

武田 このご著書は、実は当社の必読書になっているんです。『インターネット』の感想文を書いて上長の評価を受けることが、社員の昇格の条件のひとつになっていまして。「インターネット・カンパニー」を自負する組織の一員として、社員が理解しておくべきインターネットの“DNA”は先生のこの本にすべて集約されていると思っています。

村井 こんなに古い本を、ありがとうございます。最近この本が教科書や入試問題に使われることがあって、僕も時折読み返すんですよ。発行から20年以上も経っていますが、言いたいことは今でもそれほど変わらないなと思います。

武田 普遍的な名著です。今日は、その内容について直接村井先生にうかがっていきたいと思います。

 まず、「はじめに」では「インターネットはプロトタイプである」とおっしゃっていますよね。これはどういう意味なのでしょうか。

村井 インターネットに限らず、新しい技術は皆プロトタイプですよね。使ってみなければわからない。だから、使ったうえでその技術についての議論を進めていくことになる。まずはリスクを恐れず、使ってもらうことが必要なんです。

 近年注目されているAI(Artificial Intelligence:人工知能)もそうだと思います。「AIが暴走したらどうするの」とか「ラーニングのデータがそもそも偏っていたらどうするの」といったことを考え出すと、前に進めないんですよ。

武田 テクノロジーの進化が阻まれてしまうんですね。



武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役 兼 最高経営責任者]

日本大学芸術学部在学中の1996年、前身となるエイベック研究所を創業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発し、複数の特許を取得。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。これまでに森永乳業、ライオン、資生堂ジャパンをはじめ、300社超のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア(矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリンと大阪に支局を開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、ロングセラーに。また、CSR活動の一環としてJFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」のパーソナリティも務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


識者に聞く ソーシャルメディア進化論

史上最も多くの人々がつながり合った今、私たちを取り巻く社会はどう変化していくのか? NTTドコモ、セブン&アイ、資⽣堂ジャパン、ライオン、森永乳業をはじめ300社超のマーケティングを支援してきたクオン代表 武田隆氏が、各分野の有識者とともに変わりゆくインターネット時代の未来を読む。

「識者に聞く ソーシャルメディア進化論」

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