「デジカメメーカーが、医療機器で大繁盛している」

 こんな話を聞いたら、不思議に思うカメラユーザーは少なくないだろう。

 高齢化などによる医療機器需要の増大を受け、現在、医療ビジネスは「大隆盛」の様相を呈している。そんななか、気炎を上げるのが、富士フイルムホールディングス、オリンパス、コニカミノルタホールディングス、ペンタックス(今年HOYAへ吸収合併)、キヤノンなど、これまでデジタルカメラで世界的なシェアを取って来た精密機械、情報機器メーカー各社だ。

 世界のデジカメ市場は現在も成長を続けているものの、国内はすでに過当競争に陥っている。そのため、ここ数年のあいだにカメラ事業を止めた企業も少なくない。05年に京セラが国内のデジカメから撤退。06年にはコニカミノルタがカメラ事業を止め、一眼レフカメラをソニーに譲渡した。イーストマン・コダックもデジカメの製造部門を他社に売却している。

 しかし、このような環境下で従来のプレーヤーが元気をなくしているかと言えば、実はさにあらず。各社はカメラ事業と並行して、これまで医療ビジネスでも着々と収益を稼いで来たのだ。モノによっては1台数百~数千万円もする医療機器は、各社にとって今や一大収益源。すでに世界的なシェアを持ち、利益率がカメラ事業を大きく上回っている企業も少なくない。

 いったい、なぜカメラメーカーが医療なのか?

 彼らが成功している理由は、カメラ事業で培った精度の高い光学・精密技術を、医療機器で存分に活用できるため。「高度なテクノロジーがないと勝ち残れないので、これまでは新規参入者が比較的少なかった」(精密機械メーカー幹部)という市場特性も追い風になっている。

経営資源を集中してV字回復
富士フイルムの「凄み」

 各社の医療事業を分析すると、その勢いは堅調そのものだ。

 その代表例が富士フイルム。デジカメの普及などにより、フィルム事業は2000年頃から急速に落ち込み、今や売上高は全体の数%程度となっている。そこで同社は、04年に中期経営計画「VISION75」を策定。FPD(フラットパネル・ディスプレイ)などの高機能材料、携帯向けレンズなどの光学デバイス、医療機器などの成長分野に経営資源を集中して、数千億円もの投資を行なった。その結果、06年度には見事に「V字回復」を達成。2007年度は売上高(約2兆8470億円)、営業利益(約2000億円)とも、過去最高を記録したのである。

 なかでも成長著しいのが、売上高約2900億円に達した「メディカルシステム・ライフサイエンス事業」。今後2年間で24%の成長が見込まれている。今年3月には富山化学工業を買収し、治療分野への進出も視野に入った。