副業を認めるにあたって企業が留意したいこと副業を認める企業が増える中、従業員が副業先で本業の顧客の引き抜きを行う可能性も…!?(写真はイメージです)Photo:PIXTA

「副業禁止」の税理士事務所で働く田中は、年金事務所からの問い合わせで副業がバレてしまう。その後、取引先の社長から連絡があり、副業先で顧客の引き抜きを行っていたことが判明。所長は就業規則違反の田中に懲戒解雇を言い渡すが、この解雇は認められるのか?副業を認める時代の中で、企業が抱える問題点も合わせてお伝えしたい。(特定社会保険労務士 石川弘子)

O税理士事務所概要
25年前に創業した税理士事務所。地域では、親切で仕事が丁寧と評判の事務所で、職員数は20名ほど。50代の所長を中心に、若手税理士が活躍中。
登場人物
山形:20代半ばの男性。大学卒業後、O税理士事務所に就職。税理士を目指して勉強中。先輩の田中とペアで仕事をすることが多い。
田中:30代後半の男性。大学卒業後、一般企業に勤めながら税理士試験に合格した後、O税理士事務所に転職。顧客の前では愛想がいいが、同僚に仕事を押し付けるところがあり、人望がない。妻と中学生になる娘がいる。
岡山:内勤事務のリーダー。田中と同世代の女性。真面目で丁寧な仕事ぶりから、所長の信頼も厚い。
所長:創業者で50代の男性。20代で税理士試験に合格し、30代で独立。着実に事務所を拡大し、地域の評判も上々。いつもは温厚だが、仕事に対しては厳しい一面もある。

グチの多い先輩が所長に叱られ
陰で後輩に八つ当たり

 顧客訪問の帰り道で、田中は助手席から運転中の山形に声をかけた。

「山形、さっきの件よろしく。早くやらないとあそこの社長はうるさいからな」
「わかりました」
「ところでうちの事務所、安い給料でやってられないよなあ。所長なんかベンツ乗り回して、ゴルフしているだけで高い給料とってるからな。所長のような生活がしたいよ」