>>(上)より続く

 まことに身勝手な被害者意識を抱いたBさんは、今度は加害者側に回ろうと決意した。悪党にありがちな成り行きである。すなわち、「出会い系で使用する自撮り画像を自分も盛って撮ることにしよう」と。

「『写りがいい』の程度ではなくて、『本人の面影はあるんだけどほぼ別人といっていいくらいイケメンになっている』自撮りを目指そうと。ウソではありませんからね。自撮り画像がよければそれだけ出会える確率も上がるので」(Bさん)

 Bさんはそれからポーズやライティング、角度、表情などをさまざまに研究した。試行錯誤の末に手にした自撮り画像は、Bさんの戦果をやや上げることにとどまった。

「もっと入れ食いになるかと思っていたんですが、世の中そんなに甘くなかったようです」

 期待が大きかった分、効果のはかばかしくなさに落胆があったが、Bさんは自撮りの喜びに目覚めていた。自分は実は思っていたより、いや自分はかねてから思っていた通りイケメンだったと、うっとりするくらいのイケメンぶりを自撮り画像が証明してくれるのだった。

 写りをよくするための努力には手応えがあった。凝れば凝るほどいい写真が撮れるようになっていく。Bさんは出会い系と並行して究極の自撮り画像を追求していった。もはや自撮りは女性を釣るための手段でなく、イケメンである自分を体現する目的そのものになっていた。

 そんな中BさんはSNOWに出会った。大きな衝撃を受けたそうである。

「なんの工夫もしないで、スマホのカメラで適当に撮った画像をちょっと編集するだけで、『自分なんだけど自分じゃない』顔が簡単に作れました」

 Bさんは出会い系用画像にさっそくSNOWを取り入れることにした。SNOWを使って出会い系を利用する男性は少なくないらしい。