日本では生きていけない
冒頭で紹介した朱さんは、「近年、中国への帰国を選択する友人が少なくない」と明かす。日本の大学を出たとはいえ、日本で就職をせずに帰国するのは、「日本の給与水準では生きていけない」からだと朱さんは断言する。
それでも日本で頑張っている中国人がいるとすれば、「それは、日本人の夫を持つなどして、家計的にも比較的ゆとりのある世帯だから」と朱さんは説明する。
一昨年、都内である記者懇談会があった。「日本は働きたい国ですか」というテーマで、日本の大学を卒業した複数のアジア人が登壇した。筆者は、中央アジア出身の元女子留学生に「日本はお金を稼げる国だと思いますか」と質問した。
彼女は「いい質問ですね!」と反応しながらも、はっきりとした回答を避けた。おそらく主催者側の体面を慮ってのことだったのだろうが、振り返ればあのときの答えはやはり「ノー」だったのではないだろうか。
外国人の働き手が増える昨今だが、これを「日本に魅力があるからだ」と解釈するのは、いささか早計のようだ。
(ジャーナリスト 姫田小夏)