ここ1年、ミニブログ等での自己紹介の写真欄に、サングラスをかけ、厳粛な表情でこっちを睨んでいる中年男の写真が多用されている。反社会勢力、あるいは超大金持ちの子弟に愛用されているサングラス姿は、中国社会で大抵の場合顰蹙を買うが、急に流行するには訳がある。

多くの場合、使われていたのは陳光誠氏の写真だった。盲目の人権活動家で、一時は有名であったが、しばらく音沙汰がなかった。しかし、インターネットでは彼は忘れられていない。5月3日、4日に中国・アメリカ間の戦略と経済に関する対話が開かれる前に、彼は夏空の流星のように急に明るさを増し、また消え去っていこうとしている。(在北京ジャーナリスト 陳言)

障害者や出産の権利をめぐって
インテリを共鳴させた陳氏

 一国の人権状況は、その国の身体障害者に対する処遇を見るだけで、皮相ではあるが、かなりの部分が見出せる。

 北京の地下鉄では毎日のように、盲目の人や手足の不自由な人が、スピーカーのボリュームを最大にして、あまりにも古くなった歌と最近の流行歌をMP3から流して物乞いしている姿に出会う。身体障害者としての権利はまったくなく、ただ職業として物乞いをしている。

 その北京の地下鉄は、身体障害者に対しては決して十分な思いやりを示しているわけではない。この問題に注目させたのは、誰あろう陳光誠氏だった。北京の地下鉄では法律上、障害者の使用は無償だという規定があるにもかかわらず、チケットを買わないと乗車できなかった。2003年、陳氏は、それを訴えて勝訴した。その時から彼は有名になった。

 中国のマスコミが注目したのは、彼が盲目の人であることだった。一時は報道が集中的に行われたものの、その後はあまり触れられず、いつの間にか陳氏は大都会では忘れられていった。また彼が勝ち取った地下鉄の障害者無償使用の権利も、機械による改札自動化のなかで、忘れ去られてしまった。