アラブ 2018年10月26日

[教えて! 尚子先生]
なぜトランプ政権でパレスチナ問題に対する姿勢が変化したのでしょうか?
~エヴァンジェリカルから知る中東政策・中間選挙~【中東・イスラム初級講座・第46回】

エヴァンジュリカル=福音派に高まる国外への関心

 福音派の起源は18世紀に、北アメリカのイギリス植民地で起きた「大覚醒」とよばれる信仰復興運動にさかのぼります。これによって19世紀のアメリカでは、福音派が最も優勢な宗派となっていました。

 ところが、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、進化論に代表される近代主義がアメリカに押し寄せると、伝統的な聖書解釈に疑問が寄せられるようになっていきました。その結果、近代主義の波をうまく調和させることのできた、いわゆるリベラル派とよばれる人々が主流を占めるようになっていきました。このグループがメインライン(主流派)と呼ばれています。

 これに対して、聖書に絶対的な価値を置くべきと反対したのがエヴァンジェリカルでした。ところが1930年から1940年代にかけて、より聖書を厳密に尊守し、世俗的な価値に懐疑的な人々が原理主義者と呼ばれるようになり、分裂していきます。
 
 世俗に対して背を向けるのではなく、積極的に社会に対して福音を伝道すべきだと主張して袂を分かった人々は、「新福音派」と呼ばれるようになりました。彼らがまず取り組んだのが、無神論を唱えていた共産主義への反対運動でした。共産主義者たちが宗教の自由を奪っているという観点から、反共運動を展開したのです。この考え方がその後の人権擁護運動へとつながっていったといわれています。
 
 冷戦が緩和されるにつれて、エヴァンジェリカルの関心は、反共運動から国内問題へと移っていきました。1970年代には、人工妊娠中絶の問題や、公立学校での祈りや教育内容の問題(進化論を教えるべきか否か)などに積極的にかかわるようになっていきました。基本的に彼らは、人工妊娠中絶はもちろん、進化論を公立学校で教えることにも反対、同性婚についても認めないという立場をとっています。
 
 エヴァンジェリカルが国外の事象に強く関心を示すようになったのは、冷戦終結後の1990年以降でした。彼らはその関心を宗教の自由、人身売買の禁止、途上国の債務救済、アフリカのHIV/エイズを中心とする医療問題へと拡大していきました。こうして彼らはスーダンの和平プロセスや、北朝鮮での人権保護活動などに積極的に取り組んでいったのでした。

 そのほかのエヴァンジェリカルの国外政策の特徴としては、聖書に対して忠実であろうとする傾向が強いため、とくにユダヤ教、ひいてはイスラエルに対してとても好意的な態度を示していることです。
 
 この傾向はとくに白人のエヴァンジェリカルに顕著だといわれており、2013年に行なわれた意識調査では、白人のエヴァンジェリカルの82%が「神はイスラエルをユダヤ人に与えた」と回答していたそうです。ユダヤ人の中で同じ回答をした人は40%しかいなかったといいます。エヴァンジェリカルはユダヤ人以上にイスラエルという国家を支持していたのです。
 
 また、一部のエヴァンジェリカルの人々は、キリストの再臨のための条件として、イスラエルの国家建設を支持しているそうです。彼らのようにキリスト教徒でユダヤ国家建設を積極的に支持している人々は、「クリスチャン・シオニスト」と呼ばれています。

 エヴァンジェリカルについて研究しているアムスタッドは、エヴァンジェリカルがイスラエルを支持する理由は、神学的な理由からだけではないと主張しています。彼は著書である『エヴァンジェリカルズ:アメリカ外交を動かすキリスト教福音主義』の中で、彼らがイスラエルを支持する理由には、イスラエルのみが中東において民主的な国家であることや、アメリカとの対テロ同盟国であることもその理由であると述べています。

エルサレム旧市街にある嘆きの壁と岩のドーム (Photo:ⒸAlt Invest Com)

作家・橘玲の切れ味鋭い見解が毎週届く!
有料メルマガの
無料お試し購読受付中!
お試しはこちら

幸福の「資本」論|橘玲著 幸福の「資本」論 重版出来!
橘玲著

あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」。あなたが目指すべき人生は?
定価:1,500円(+税) 発行:ダイヤモンド社
購入はコチラ!
世の中の仕組みと人生のデザイン|橘玲のメルマガ配信中! 20日間無料 ザイでしか読めない!橘玲のメルマガ「世の中の仕組みと人生のデザイン」も好評配信中!
月額800円+税
いますぐ試す(20日間無料)

バックナンバー

»関連記事一覧を見る

海外投資必勝マニュアル&本

海外投資のノウハウが凝縮! ここで紹介しているコンテンツ、書籍はすべて、ネットから購入が可能です。さらに「海外投資実践マニュアル」は「海外投資を楽しむ会」の会員になれば割引価格で購入可能です。

作家・橘玲のディープなメルマガ
発売即重版決定! 橘玲の最新刊【幸福の「資本」論】発売!
橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
橘玲×ZAiONLINE海外投資の歩き方
作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
subcolumn下影

ページのトップに戻る

本WEBサイトに掲載している全ての記事およびデータについて、その情報源の正確性・確実性・適時性を保証したものではありません。本サイトの提供情報を利用することで被った被害について、当社および情報提供元は一切の責任を負いませ ん。万一、本サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社および情報提供元は一切責任を負いません。本サイトからアクセス可能な、第三者が運営するサイトのアドレスおよび掲載内容の正確性についても保証するものではなく、このような第三者サイトの利用による損害について、当社は一切責任を負いません。また、併せて下段の「プライバシーポリシー・著作権」もご確認ください。