トヨタとソフトバンクが描く「MaaS市場の覇者」への道Photo:TOYOTA

10月4日、トヨタとソフトバンクがモビリティ事業での協業を発表した。カーシェアや公共交通機関など、シームレスに移動を最適化していく新しい概念「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」市場におけるサービス事業会社を共同で立ち上げるというものだ。これに関しては、その後の報道を含めても、なかなか具体的なビジネスが見えてこない。そこで本稿ではトヨタとソフトバンクが具体的に何をやろうとしているのかを解説する。結論から述べると、両社がターゲットとするのは自治体や国が主導する「官製MaaS市場」だ。(ITジャーナリスト・ライター 中尾真二)

トヨタとソフトバンク、MaaS市場での現在地

 両社の協業内容の具体性が見えないモヤモヤ感は、じつは自動運転車やモビリティ革命全般にいえる。ビジネスモデルがわかりにくい、もしくはまだ成立していないからだ。まずはトヨタとソフトバンクによる事業会社が何をするのかを読み解くため、改めて両社の立ち位置と戦略を整理する。

 トヨタ経営陣は、次世代車に必要な要素である「コネクティビティ、オートノマス、シェアード、エレクトリック」の頭文字をとった「CASE(ケース)」車両の必要性と、モビリティ革命に伴う業界の変化に、尋常ならざる危機感を抱いている。いま変革に対する動きを怠れば、大トヨタとて明日はないという認識でEV技術、AI技術、シェアリング技術への投資や買収を加速。2018年1月には「モビリティプラットフォーム構想」を発表し、豊田章男社長が「製造業からモビリティカンパニーになる」とまで表明している。

 ソフトバンクの注力分野はロボットとAI技術であり、その中で自動運転やモビリティサービスは、ロボットやAI技術を実サービス・実ビジネスへとつなぐ応用分野のひとつ。ここを次世代事業の中心に据えるべく、10兆円のファンドを組み、半導体設計などを手がけるアーム・ホールディングスをはじめ、ロボット研究開発のボストン・ダイナミクス、シャフトの買収、モビリティでは自動運転のCRUISE、ライドシェアのUber、Grab、DiDi、OLAなどグローバル企業の株主となっている。