a10月19日の会見で謝罪と説明を行ったKYBの齋藤圭介取締役専務執行役員(右)と子会社のカヤバシステムマシナリーの廣門茂喜社長。Photo by Tomomi Matsuno

「現実問題、やりきれないよ」。ゼネコン幹部は、油圧機器大手KYBによる検査データの改ざんが発覚した建築用免震・制振用装置の交換工事に早くも白旗を揚げる。

 KYBは2020年9月までの約2年間、装置の新規受注を停止し、基準に適合しない製品をその間に全て交換する方針を決めた。

 同社は免震・制振用装置で国内シェア45%(17年度売上高ベース)を占め、納入先のゼネコンは25社前後に及ぶ。国の認定基準や顧客との契約の基準を満たさなかったり、改ざんの疑いがある装置を設置された物件の数は全国で約1000件、製品数にして約1万個に上る。

 建物の地下に設置される免震用は比較的交換しやすいが、各階の壁の中に埋め込まれた制振用の交換は容易ではない。設置個所の壁を取り壊すといった手間のかかる工事が発生する。

 その上、高級高層マンションなどに設置されるケースが多く、交換のために装置を運び込むのにも骨が折れる。出来上がった建物の屋上に装置を引き上げるクレーンを設置するのは難しい。となると、住宅用エレベーターで運ぶ手段が考えられるが、長さおよそ1~3メートルの棒状の交換用装置を積み込むには、エレベーターの壁を外す必要も出てこよう。