『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』では毎月、さまざまな特集を実施しています。ここでは、最新号への理解をさらに深めていただけるよう、特集テーマに関連する過去の論文をご紹介します。

 2018年12月号の特集タイトルは「好奇心:組織の潜在力を引き出しビジネスを成長させる」である。

 常に新機軸を打ち立て、チャレンジを続ける常勝企業の共通点は何だろうか。その大きな要素の一つに「好奇心」がある。個々人のモチベーションが上がり、チームが活性化し、前向きな経験が蓄積されていく。それがひいては収益向上に結び付くという好循環が生まれる。ビジネスの原動力としての好奇心に迫る。

 ファーストリテイリング柳井正会長兼社長へのインタビュー「世界で勝ち抜くには好奇心が不可欠である」で、柳井氏は、国境や産業の境界が薄れ始めているいま、企業も個人も、世界中のあらゆる問題と無関係ではいられない時代が訪れたと言う。そうしたグローバルかつフラットな環境で勝利を収めるためには、何事にも好奇心を持つことが不可欠だが、現代の日本人には、競争とは勝たなければならないものだという意識自体が欠落していると、警鐘を鳴らす。

 ハーバード・ビジネス・スクールのフランチェスカ・ジーノ教授による「好奇心を収益向上に結び付ける5つの方法」では、好奇心の恩恵と、その発揮を妨げる要因について詳述したうえで、リーダーが部下や自身の好奇心を刺激して高い収益を実現するための5つの方法を紹介する。最近の研究から、好奇心が企業業績に果たす役割は、従来考えられていたよりもはるかに大きいことが判明した。また、リーダーがマネジメントを少し改めると、従業員の好奇心が刺激されて、会社をよりよい方向に導けることと、その一方でリーダーは、それに伴うリスクが高まるのを恐れて、好奇心を抑え込んでしまう傾向にあることもわかった。

 ジョージ・メイソン大学トッド B. カシュダン教授らによる「好奇心の5つの類型」では、「どのような好奇心があるか」を考えるための5つの類型を提示し、それぞれが仕事と人生にどう役立つかを考える。好奇心はこれまで、単一の資質だととらえられ、「どれくらい好奇心があるか」に焦点が当たりがちだった。しかし、近年の研究では好奇心を細分化してとらえるようになっている。

 エゴンゼンダーシニアアドバイザーのクラウディオ・フェルナンデス=アラオス氏らによる「リーダーの成功と好奇心の関係」では、エゴンゼンダーの調査から明らかになった、好奇心がリーダーの評価や成功に与える影響を示す。

 アラヤの金井良太CEOによる「ヒトもAIも好奇心で進化する」では、気鋭のAI系スタートアップの経営者であり、情報理論と神経科学の観点からAIに意識を持たせる研究を行っている筆者が、好奇心の本質を明らかにする。人が好奇心を持つのと同じように、AIにも好奇心を持たせることで、その学習効率を大幅に上げる研究成果が生まれている。それでは、そもそも、人とAIにとって、好奇心とは何なのか。そして好奇心を身につけたAIは、どう進化していくのだろうか。