熊本ではこのワケギのことを「ひともじ」(元々は宮中の女房言葉で「葱」を意味する隠語)と呼ぶことから、そのまんまの名前である。これはまさに酒のつまみとしてピッタリだ。辛子酢味噌が、たっぷりかかっているが、マイルドで気にならない。

「このギューっと強くまかれている意味があるんだなぁ。味が凝縮して感じるし、歯応えがずっとよくなるよ。そして酢味噌がなにより旨いなぁ」

 辛子酢味噌ももちろん自家製だそうで、和辛子を粉から自分で練ってつくるとのこと。

 お酒は天草地方唯一の蔵元、天草酒造の『天草』(天草市)の米焼酎をロックで頂いた。厚みがある味の中にも清涼感を感じるようなバランスのよい味だ。

馬肉の生産量・消費量ともに全国トップクラス
刺身は、赤身は旨み、白身は食感で味わう

馬刺しは左から赤身のヒレ、バタの外側になる赤身と脂身が層になったフタエゴ、そして、真っ白な首の後ろの部分の肉タテガミ。

 続いて注文したのが、数多くの熊本の郷土料理の中でも代表格である、馬刺しだ。

 熊本は古くから馬の産地であった。阿蘇地方では数多くの牧場があり、そこで農耕馬が生産されていたのだが、近代化で農耕馬が不要になると、食用として用いられるようになった。また、戦国時代後半から、この地を治めた加藤清正が、文禄・慶長の役の際に戦地で食糧が不足した際に、しょうがなく軍馬を食し、その後、熊本に広めたという伝説もある。

 熊本以外にも、青森、山形、福島、長野、山梨などに馬肉を生で食する習慣があるが、熊本の馬刺しはこの連載で何度も紹介している『農山漁村の郷土料理百選』でも熊本の郷土料理として選定されており、熊本県は全国トップの生産量を誇る。

 店では『馬刺し 三点盛り』と『五点盛り』があり、三点のほうを頼んだ。供された刺身はヒレ、フタエゴ、タテガミだ。ヒレは赤みがかっていて、脂身が少なく、赤身ならではの旨みがもっとも味わえる。フタエゴはバラの外側に位置する赤身と脂身が綺麗に層になっている部位である。赤身と比べるとコリコリした食感があり、脂身と赤身のそれぞれのよさがでている。タテガミはその名の通り、首の後ろの部分の肉で、真っ白な肉でコーネとも呼ばれる。こちらも脂というかむしろゼラチン質でプリプリとした食感があり、とても旨い。それぞれ、甘口の醤油に、生姜、にんにくを好みで合わせて食べる。