熊本の中華料理の定番「太平燕」
春雨に白湯スープであっさりと食べられる

 そして、熊本郷土料理で〆といったら、これを忘れてはいけない。そう、「太平燕」(たいぴーえん)だ。

 熊本の太平燕は、福州出身の中国人の開いた熊本市内の中華料理店『中華園』などが元祖とされる。野菜の入った白湯スープに春雨がはいったものである。特徴は具に揚げた卵が入っていること。元々は福建省の福州料理で、こちらでは鶏卵ではなくあひるの卵を使った具で、『扁肉燕』というワンタンの皮のようなものが春雨の変わりに入っている。

 白湯スープの風味に、野菜やいかなどの魚介の具、そして、春雨と、全体的にあっさりとしていながら、旨みがタップリとした風味に仕上がっている。

「わはは。飲んだ後はラーメンよりもこっちだな。麺が春雨っていうのがちょうどいいよ。すべての飲み屋に置いててくれればいいのにね!」

 飲んだ後のラーメンは定番(?)だが、それと比べると春雨の分軽やかで、どんどん食が進む。いや、中年の疲れた胃袋にはむしろこっちがピッタリな気がする(笑)。

白湯スープに野菜と魚介に揚げた卵がトッピング、そして、春雨を用いる太平燕。まさに飲んだあとにピッタリのスープである。

熊本家庭の味。蒸かしたさつま芋の
ほっこりとした素朴な風味の「いきなり団子」

 〆の太平燕にすっかり満足していたところ、メニューの中に「いきなり団子」(熊本弁では「いきなりだご」と呼ぶ)の文字を見つけてしまった。

「ムムム!! 星君!! オイはこれを頼まずに帰れなか!」

 とばかりに、腹はすでにいっぱいだったが、『巨人の星』の左門豊作(熊本出身)ばりに男気を出して、ラストのおやつを注文した。

 いきなり団子はまさしく、熊本の郷土菓子である。名前の由来は「いきなり」の来客でもすぐ作って出せることからなどといわれていて、各家庭でも作られているものである。作り方はまさしく「いきなり」できる簡単なもので、輪切りにしたさつま芋にあんこをのせて、小麦粉を練った皮でくるんで、蒸かしたものだ。

 ここのお店では、冒頭で説明した、オーナーの実家で手作りしたものをお店で出しているという。まさしく熊本家庭の味。

 さつま芋とあんこの素朴な風味で、口の中がいっぱいになる。高級和菓子とは対照的で、なんのケレン味もなく、素朴すぎるが、それが素晴らしい! 大変満足して、熊本料理の晩餐を締めくくった。

 左門豊作のように大きくなってしまったお腹をさすりながら、渋谷駅までの10分強の誘惑の多い道を、誘惑に負けないように、今日は寄り道せずに帰って行ったのであった。

さつま芋にあんこを乗せて、皮に包んで蒸かすのみという、シンプルで素朴な味わいのいきなり団子。
取材協力:
熊本バル うせがたん
東京都渋谷区神泉町10-17-2F
電話 03-6416-3825
営業時間 11:45~14:00(日祝除く)、18:00~25:00(日祝24:00)