定年後に「キャリア難民」へ転落し、路頭に迷わないための心構え定年後、「キャリア難民」に陥らないようにするには、好きだったことや熱中していた趣味や特技などから自分の嗜好性を明らかにし、大人で身につけた能力や技術、知識もすべて「見える化」する作業から始めるのがポイント(写真はイメージです)Photo:PIXTA

ほとんどの日本人に遠い
キャリア自立の道

 これまで数回にわたり、趣味や健康などの話をしてきましたが、今回は少し重い話をします。

 昨今、「キャリア・オーナーシップ」という言葉をよく耳にします。「オーナーシップ」とは、「所有者」として振る舞うということです。「キャリアを所有する」とは、自分のキャリアに責任を持ち、自らの意思で自分の未来を決めていくという意味です。「キャリア自立」をより明確に示した言葉といえます。しかし、これはそんなに簡単なことではありません。

 自分のキャリアを自分では決めなくても済んだ、そんな会社勤めが長かった日本人にはとりわけ難しいことだと思います。

 日本人だけでなく、そもそも人類は長い間、キャリア・オーナーシップを発揮し、自由自在に職業を選んだりはしてきませんでした。

 個々人のキャリアは非常に他律性が高いものだったと考えられます。そもそも職業は親の跡を継ぐことが多く、自分で選ぶ以前に決まっているものでした。明治以前の日本でいえば、百姓の子は百姓、武士の子は武士といった具合です。

 そこに職業選択の自由はない代わりに、悩むこともなかったのです。なかでも、ほんの一握りの変わり者だけが自分の願望に目覚めて、規定路線とは違う仕事の道に進むものでした。これは何も大昔の話ではなく、つい最近までの常識です。

 決められたコミュニティを脱して、居住地や職業を変えた人間は皆から「はぐれ者」と呼ばれました。変わったことをすることが嫌われてきたのが、日本という社会です。