医療がどれほど進歩しても、患者が治療法を順守しなければ効果はない。そこで、データサイエンスと行動科学を組み合わせた「高精度エンゲージメント」という取り組みが注目を浴びている。薬や治療だけでなく、動機づけまでも個々の患者に合わせて提供する方法であり、すでに大きな成果を上げ始めている。


 医療従事者と医療保険者は、従来型の医療における「平均値の欠陥」と呼ぶべきものを克服するために、ビッグデータをますます利用している。つまり、集団レベルで検証済みの治療法は、実際には、ある人には効果があるが、別の人には効果がないかもしれないのだ。

 したがって、高精度医療(プレシジョン・メディシン)の目標は、患者の診療記録に準拠した、より細密な遺伝子型や表現型のデータに基づいて、集団ではなく個人にふさわしい治療法を特定することである。このような個人データ主導型の治療計画によって、特定の治療法が特定の患者に効く可能性が高まる。