CEOは日々、大小さまざまな意思決定を下さなければならず、物理的にも精神的にも仕事以外に使える時間はほとんどないはずだ。だが実際には、実に多くのCEOたちが、トライアスロン、スカッシュ、格闘技など、仕事とは無関係の趣味に時間を割いている。たとえば、ゴールドマン・サックスのデーヴィッド・ソロモンCEOのもう一つの顔はDJである。彼らはなぜ、趣味に情熱を注ぐのか。筆者らの調査によって、それがリーダーシップによい影響を与えていることが明らかになった。


 デーヴィッド・ソロモンがゴールドマン・サックスのCEOに任命されたとき、メディアが注目したのは、彼の職歴や昇進の経緯だけではなかった。ソロモンは趣味として、正真正銘のDJをしており、そのことも取り上げられたのだ。

 ソロモン(またの名をDJ D‐ソル)は、「仕事にも、仕事以外の活動にも情熱を」という信念で知られ、多くのCEOがその信念を共有している。筆者らは、S&P500企業(米国株式市場の代表銘柄500社)の中に、いわゆる「真剣な余暇活動」に従事するCEOを多数確認している。これは、しばしば若い時期に始め、いまもなお、多大な時間とエネルギーをつぎ込んでいる趣味やボランティア活動を指す。

 真剣な趣味が、よりよいリーダーをつくるのだろうか。情熱的に趣味に打ち込むCEOの仕事上のパフォーマンスを調査した研究がいくつか存在するが、結果はまちまちだ。たとえば、趣味でパイロットをしているCEOの会社はイノベーションの点で優れており、マラソンに打ち込むCEOの会社は、全体的に優れた企業パフォーマンスを示すという所見が見られた一方、CEOがゴルフに身を入れすぎることは、実際、会社の株式価値に悪影響を及ぼす可能性があることがわかっている。

 リーダーたちはなぜ、ただでさえありえないくらい忙しいスケジュールの合間をぬって、趣味に情熱を燃やすのか。そして、趣味に打ち込むことがパフォーマンス向上につながると彼らは感じているのか。この2点を調べるため、筆者らは調査を行った。

 まず、2018年初めの時点でS&P500に属する企業の、CEOの趣味について公開されている情報を探した。その結果、趣味に真剣に打ち込んでいるCEO56人を特定した。次に、その56人のCEOの人となりと、その趣味について理解するために、数千にも及ぶ記事や動画、ソーシャルメディアの投稿を徹底的に調べた。その結果、こうしたCEOらが趣味としての活動をいかにしてリーダーシップ向上につなげているかを、鮮明に照らし出すことができた。

 さらに、公開情報から得られた所見を実証し、より豊かなものにするために、筆者らの一人(CEOの経験があるエミリア)が、S&P500企業とフォーチュン500企業、および同規模の企業のCEO17人に直接、趣味に関するインタビューを行った。本気で打ち込んでいる趣味がある場合は、その活動が本人自身やリーダーとしての能力にどう影響しているかを尋ねた。

 公開情報でもインタビューでも、CEOたちは、趣味に打ち込むことが、際限なく増える要求に対処するうえで有益だと明言している。彼らはたいてい、余暇活動にかなりの時間をつぎ込んでおり、インタビューを受けたあるCEOは「ワークライフの侵食」から趣味の時間を守るために、かなり前からスケジュールを開けておくという周到さだった。

 趣味に情熱を傾けることがCEOたちにとっていかに有益か、いくつか共通点が浮かび上がってきた。