広島・丸外野手の巨人入りが波紋を呼んでいるPhoto:PIXTA

 FA宣言をしていた広島・丸佳浩外野手の巨人入りが決まったことが大きな話題になっている。

 2年連続でセ・リーグのMVPになった日本球界屈指の外野手だから去就が注目されるのは当然だが、それ以上に広島V3の顔ともいえる「タナ・キク・マル(田中広輔・菊池涼介・丸の1~3番トリオ)」の一角がライバルチームの巨人に移ることが、ファンの気持ちを揺らしているようだ。

選手会が勝ち取った権利だが
ファンの胸中は複雑

 FAは出場選手登録日数が原則8シーズン(1年=145日で計算)に達した者に与えられる権利。ドラフトで所属球団が決まってしまう選手に一定期間頑張ってきたご褒美として球団選択の自由を与えようと、選手会が要求し勝ち取ったものだ(1993年オフに導入)。

 だから堂々と行使していいはずだが、日本の場合、抵抗を感じるファンも少なくない。報道によれば丸に提示された条件は広島が4年総額17億円、巨人が5年総額30億円、ロッテが6年総額25億円。「育ててくれた球団への恩や応援してきたファンの気持ちよりも報酬を優先するのか」というわけだ。

 メジャーリーグの場合、FA制が導入(1976年)されて40年以上経って慣れっこになっているのか、それとも国民性の違いなのか、選手はFAでどんどん移籍するし、ファンもことさら騒ぐことはない。が、日本のファンはそこまでドライになれないようだ。

 丸もFA行使を表明した3週間あまり、かなり悩んだという。広島ファンに気を遣う部分もあったにちがいない。だが、プロとしての評価は提示金額と考えるのは当然だし、しかも生まれ育った千葉に近い球団で、少年時代から憧れた巨人からのオファーがあったということもあって移籍を決断したらしい。

 FA移籍が発表されると、ネットでは元の所属球団のファンから「裏切り者」といった辛辣なコメントが飛び交うのが常だが、丸の場合は温かな声が多かった。「丸には34年間遠ざかっている日本一のために働いてほしかった」という声はあったものの、「V3のために頑張ってくれた丸には感謝しかない。その丸の決断だから支持します」といったコメントが目立った。真面目な努力家で、広島ファンへの対応もよかった丸だからだろう。