サムスンサムスンがグローバル市場で強さを維持できる秘訣を解き明かします Photo:iStock/gettyimages

30万人もの社員を抱え、グローバル市場での競争に圧倒的な強さを見せる、韓国最大のコングロマリット企業、サムスン。すでにサムスンの売上高は韓国のGDPの14%以上を占め、さらにグループ上場企業の時価総額は韓国株式市場の25%を占有しています。しかし、サムスンは昔から大きな企業だったわけではありません。独自の人材育成手法でグローバルに活躍できる人材を育成し、世界を代表する企業の1つとなったサムスンのしたたかな人材戦略から、日本企業は何を学べるのでしょうか。『人事こそ最強の経営戦略』の著者であり人事戦略コンサルティングの第一人者・南和気氏が、人事が事業を支える企業を紹介していきます。今回は「サムスン電子」を取り上げます。

時価総額はトヨタ超え、利益はアップル超え
2000年代後半から世界を圧倒

「サムスンの製品を見ない日はない」というほど世界中にサムスン電子(以下、サムスン)のビジネスは広がっています。韓国では最大のコングロマリットであることはもちろんですが、サムスンのすさまじさは、グローバルでも圧倒的な強さを示していることです。

 しかしその強さは、必ずしも圧倒的な製品力に基づいているわけでもありません。1つひとつの国、地域にしっかり入り込んでそれぞれのマーケットで勝ち切るモデルで世界戦略を展開しています。

 では、サムスンはどのように韓国以外の市場に入り込んでいるのでしょうか。

 2000年代前半まで、サムスンは日本企業の製品力の前に、なかなか思うような成長戦略を描けないでいました。しかし、2000年代後半にかけて、売り上げでソニーをはじめとする日本企業を上回り、さらに利益でも2010年前後にかけてアップルをも上回る勢いで、急成長を遂げました。

 今やトヨタをはじめとするすべての日本企業をはるかに上回る時価総額となったサムスンは、海外市場戦略において、独自の考え方で海外進出を支える人材を育成し、一貫した考え方を持って他社を圧倒していきました。

 一方で、日本と韓国の雇用環境の傾向は極めてよく似ています。韓国も日本と同じく新卒採用によって多くの社員を採用し、長期雇用の中で均質性の高い労働環境となっています。

 それでは、サムスンはどのような考え方で人材を育成し、グローバル市場を支配してきたのでしょうか。