また、世界中に広がるテロの脅威から、日本が無縁でいられるわけがない。なんらかのテロ対策が必要なのは言うまでもない。そして、グローバルな競争が激化する中、働き方の多様化や外国のお金を日本に引き込むことで競争力を強化することも必要だ。

 要は、リスクがあるから何もしない、リスクがなくなるまで新しい政策の実行を認めないというのは、厳しい国際情勢が許さない。そして、さまざまなリスクがあっても、必要な政策には取り組むという姿勢を、安倍政権は一応見せてきた。それは、コアな左派支持者を除けば、国民に一定の理解を得られてきたのだろう。

 だが、今回の「改正入管法」の国会審議では、安倍政権の姿勢が明らかに変化した。中身を詰めた法案を出してくるのではなく、細部は法律成立後に政省令で定めると説明し、中身のない法案を提出したのだ。そして、野党がなにを質問しても、政権側は「検討中」と繰り返し答えた。これまでのような、しどろもどろでも答弁しようとする姿勢すら捨てたのだ。安倍政権に「白紙委任せよ」と求めるに等しいもので、さすがにこれは、「交代可能な独裁」の許容範囲を超えてしまったのではないか。

中身のない改正入管法の白紙委任は
「保守派」と「業界団体」の板挟みが生んだ

 なぜ、安倍政権は「改正入管法」の成立をこれほどまでに急いだのだろうか。メディアの指摘では、来年7月の参院選での支持拡大のために、人手不足に悩む建設や介護といった業界団体や地方の要望に応えたいからだという。

 だが、選挙対策以上の、難しい理由があるように思う。「改正入管法」と、これまでの安倍政権の重要政策の違いは、野党に反対されるだけではなく、安倍政権のコアな支持層である「保守派」からも批判されていることだ(第144回)。

「改正入管法」は、これまでのように野党の厳しい追及に対して、しどろもどろの答弁をしていると、保守派から突き上げを受けて自民党内で議員たちが動揺し始める懸念がある。ただでさえ、「安倍政権の左傾化」と、保守派の不満が高まっている(第197回・P.5)。