北朝鮮を
「頼みの綱」とする文大統領

 文大統領が支持率回復のために重視しているのが、北朝鮮との融和政策の強化だ。

 国内の不満が高まる中で、文大統領は有権者の目線を経済政策の失敗から国外の問題に向けさせようとしている。韓国大法院(最高裁)が徴用工の問題でわが国企業に損害賠償の支払いを命じたのは、この考えに沿った「人気取り政策」が反映されているといえよう。日本企業への賠償請求に関して文政権は、判決を遅らせた理由で大法院の判事に逮捕状まで請求している。

 文政権には、「司法権の独立」を尊重する精神は感じられない。

 1965年の日韓請求権協定によって、日韓両国は過去の請求問題が“完全かつ最終的に解決”されたことで合意した。国際政治において、国家間の協定を一方的に反故にすることはありえない。それは、「国家の信頼」そのものをなくす行為だ。

 支持率回復には何でもやるという文氏の追い込まれた姿が目に浮かぶようだ。

 その上、年内に北朝鮮の金正恩委員長のソウル訪問を実現させようと、文大統領は躍起になっている。経済政策が行き詰まる中、北朝鮮との融和政策の強調は、文政権にとって支持率回復の「切り札」といえる。金委員長の訪韓を実現し、それを国全体で歓迎してハッピーな雰囲気を醸し出すことで点数を稼ぐことを文氏は狙っている。

 ただ、度重なる南北首脳会談にもかかわらず、北朝鮮と米国の交渉は進んでいない。韓国在住の知人に聞いたところ、次回の首脳会談をソウルで開催することに文大統領がこだわるあまり、「北朝鮮への譲歩が行き過ぎている」との批判的な見方は増えつつあるようだ。

 韓国には米軍が駐留している。金委員長がその韓国を訪問するということは、丸腰で敵陣に乗り込むことに等しい。強大な指導者としてのイメージを民衆に植え付け支配基盤を強化したい金委員長が、文政権の要請にやすやすと応じるとは考えづらい。