朝鮮半島情勢の中で
孤立しつつある韓国

 現在の北朝鮮・金委員長にとって、韓国と首脳会談を行う必要性は低下しているはずだ。なぜなら、6月の米朝首脳会談にて、北朝鮮は体制維持のための「時間稼ぎ」に成功したからだ。北朝鮮は朝鮮半島の非核化にコミットすると表明した。

 見返りとして、米国は北朝鮮の「体制維持」を保証した。会談の前日に金委員長がシンガポール市内を散策し、上機嫌だったことを見ると、“落としどころ”は初めからわかっていたに違いない。

 米国から「体制維持の保証」を取り付けた金委員長は、米国との貿易戦争に直面する中国との関係強化に取り組んでいる。中国からのバックアップを得た上で同委員長は米国との交渉を行い、制裁の解除などを通して社会体制を立て直したい。

 それは、金一族の支配基盤を強化することに他ならない。

 現在の北朝鮮にとって重要なのは、中国との関係を強めつつ、時間を稼ぐことだ。すでに、北朝鮮と中国の関係強化は、ロシアの対北朝鮮政策にも影響を与えている。ロシアとしても、極東地域での影響力を強めるために北朝鮮との関係は欠かせない。

 北朝鮮は主要国との交渉の門戸を開くために韓国との会談に応じた。金委員長が米中ロと交渉を進めやすくなった状況下、北朝鮮が韓国と会談する意義はかなり低下している。

 中国経済の減速を受けて韓国の景況感も悪化している。支持率回復の頼みの綱である北朝鮮の関心は、韓国ではなく、米中などの大国に向かっている。その中で文大統領が有権者からの信頼を得ていくことはかなり難しいだろう。そうなると、韓国政府からわが国への批判・要請はさらに強くなることも考えられる。

 今後、極東地域における韓国の孤立は一段と高まる恐れがある。

 有権者は文大統領の公約が実現性を伴っていないとの見方を強めるだろう。支持率の動向を見る限り、韓国世論は自国の大統領が、都合の悪いことを糊塗(こと)しようとしていることを見透かしているとも解釈できる。この状況下、文氏が人気回復のためにやっていることは徒労に終わる可能性が高そうだ。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)