旧大蔵省から分化した財務省・金融庁と、経産省は、総合取構想が頑として動いてこなかったことが象徴するように、縦割り行政の中で天下りポストなどの省益を巡って水面下で攻防を繰り広げてきた歴史がある。このため「佐藤氏や津田氏も霞が関時代、経産省には不愉快な思いをさせられてきた過去があり、総合取の実現で経産省が一種の監督権を持つのが嫌だと思っている」(事情に詳しい関係者)とみられているのだ。

 また両氏が警戒しているとされるのは、悲惨な経営状態にある東商取の救済の役回りをJPXが押し付けられること。現任の濵田隆道氏を含め6代連続でOBが天下ってきた東商取社長のポストを守るためにも、経産省が東商取の延命策として総合取構想を“悪用”しようとしているのではないか、といった不信感が渦巻いているという。

 このため関係者からは、清田氏を刺した“首謀者”は先の二人ではないかとの観測があがっているわけだが、JPX内部の総合取反対派は彼らだけとは限らない。東商取は16年秋以降、大阪取引所の売買システム「J―GATE」を共同利用し、そのシステム利用料をJPXに支払ってきた。総合取実現でデリバティブ拡大が見込める大阪取引所はともかく、現物株が主力の東証から見れば赤字続きの東商取がグループ入りすることは、システム収入を失う上に赤字経営のツケを負わされる点でむしろ重荷であるとの考えが一部にあるとされる。

まだまだ波乱の展開か

 そんな様々な思惑が渦巻くなか、元はと言えば「ETF(上場投資信託)と同様に取引が可能と誤解した」などという、市場経験の長い取引所トップとしてあるまじき勘違いをした清田氏の脇の甘さが招いた不祥事なのは間違いない。同氏は、11月末の定例記者会見では報道陣を前に神妙な面持ちで陳謝。「月額報酬30%減額を3ヵ月」はJPXの発足以降で最も重い役員処分だが、上場企業の長となるべき立場にあって道義的責任は重く、トップの座に居座り続けるつもりなら、“禊が済んだ”と周囲に認められるまでは時間がかかるのではないか。

 ネット掲示板で「ガバガバガバナンス」とも揶揄された清田氏の不祥事。これに対し「内部告発説」が噴き出したことは、これから監督官庁やJPX内部などの幅広いステークホルダー(関係主体)を巻き込んだつばぜり合いが激しくなるのを暗示しているかのようだ。清田氏が“刺された”のかどうか、真偽のほどは定かではないが、来春頃に結論を出す見通しのJPXと東商取の総合取交渉の過程ではまだまだ、波乱の展開が待ち受けていそうである。