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気はやさしくて胃痛持ち
【第16回(最終回)】 2012年5月23日
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市川純子 [(財)日本ヘルスケアニュートリケア研究所]

気の強い周囲の女性に文句ばかり言われ続ける
気の優しい薬剤師

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シフトのことでパート同士の喧嘩が

 調剤の仕事はとても人手が必要で、どこの薬局でも薬剤師の数が不足している。医師が書いた処方箋に従い薬を出す人、コンピューターに調剤録を入力する人、処方箋と薬が合っているか確認する人、薬について患者さんに説明しながら渡す人。これらの一連の作業をミスなく、患者さんを待たせず行う。このほかに月に1回レセプトと呼ばれる調剤報酬明細書も作成する。毎日が戦争のようだ。

 Yさんが、最も胃が痛くなる憂鬱な日はシフト表を発表するときだ。パートさんによっては、「あの人と組みたくない」とか「旅行に行くので」と事前にYさんに申告してくる人や、シフト表を発表した後に変更を希望してくる人がいる。

 先月も、シフト表を発表した後、1人のパートさんが「家族とお墓参りに行きたいから、誰か変わってくれない?」と言い出した。普段から仲の悪いもう1人の薬剤師が「店長がシフト決めてから文句を言うのはおかしいよ」と強い口調で反論した。険悪なムードはその日一日続いて、新卒の若い薬剤師などは、二人の間に立ってどうして良いか分からずに涙目になってオロオロとしていた。女性同士の喧嘩は、始まるとなかなか終わらない。その日の仕事が終わった後に、お互いの言い分を聞いて「まあまあ」となだめた。

 言い分を聞いていると、最初はお互いの悪口だったのに、「店長が甘いからつけあがる」「店長がきちんと見ていないからこうなる」と自分への攻撃をはじめた。でも不満な顔は絶対できない。パートさんが辞めると、すぐに補充することもままならない。

 怒れない。なかなか注意もできない。社内の女性スタッフに気を遣ってばかりいて、本当はやらなければいけない患者さんを増やす戦略まで頭が回らない自分が情けなくて、胃が痛くなるYさんだった。

自宅では妻と娘に尽くす日々

 Yさんは、5年前に思い切ってローンを組み、妻の両親の実家の敷地内に3DKの家を建てた。長女が幼稚園に通い始めた頃から、Yさんの休みの日は娘の習い事の送り迎えの運転手となった。

 ピアノ、習字、水泳、バレエ。「小さなうちからこんなにたくさん習わせていいのか。もっとノビノビとできないのか」と思うが、同世代の子どもには当たり前のことらしい。娘と妻が教室に行っている間Yさんは、車の中でカーナビのテレビを見ながら過ごす。日曜日のテレビは居間ではなくて、車で見ることが当たり前になっていた。

 休みの日の夕飯も、いつの間にかYさんが作るようになっていった。気が強く神経質な妻は、料理や家事にとても細かい。「インターネットのレシピ通りにできていない」「盛りつけがイマイチ」「食材の生産地が明確でない」。台所にパソコンを置き画面を見ながら慣れない包丁を使い、一生懸命作った料理にまで妻が文句を言う。日曜日が一番疲労感を感じるYさんだった。

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市川純子 [(財)日本ヘルスケアニュートリケア研究所]

1961年生まれ。財団法人日本ヘルスケアニュートリケア研究所 所長。広告代理店で大手私鉄の広報を担当。その後PR会社に転職し、医薬品や化粧品分野に携わる。2003 年にJ&Tプランニングを設立。代表取締役に就任。研究や情報の開発も行いヒット商品を数多く手がける。医療健康美容分野の研究のために2010年財団を設立。


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失われた20年と呼ばれる日本経済。そんな長い停滞のなかをがむしゃらに、ひたむきに日々の仕事・生活を生きてきたビジネスマンたち。さまざまなストレスに耐えてきたカラダもそろそろ注意信号を出す頃。いろんな職場のいろんなビジネスマンのいろんな悩みと不調を少し悲しく少しおかしく紹介します。

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