従業員が働き方に自由と柔軟性を求めるなか、遠隔勤務を推奨する企業がかつてなく増えている。だが、筆者らの調査によって、在宅勤務を行う人たちの中では、孤立感と労働意欲低下の深刻化が顕著であることが明らかになった。企業は、働き方の柔軟性と効果的な協働をどう両立させるべきなのか。


 世界中の従業員は、自由と柔軟性を求めている。

 企業が提供する最も一般的な柔軟性の形態は、遠隔勤務を可能にすることだ。私の会社とバージン・パルスが実施した最新の調査で、世界の従業員の3分の1は、常時または頻繁に遠隔勤務をしていることが明らかになった。遠隔勤務者の数は、10年前に比べて115%増加した。私自身も約8年にわたり在宅勤務をしており、独立、自由、そして通勤時間5秒という恩恵を享受してきた。

 こうしたメリットがあるにもかかわらず、私はしばしば孤独と疎外感を覚え、チームとの絆が弱いと感じる。チームメンバーと直接顔を合わせることがめったになく、46平米 のマンションの部屋に閉じこもっているからだ。

 世界中の従業員とマネジャー2000人以上にインタビューを実施した結果、遠隔勤務者の3分の2は仕事に意欲を持っておらず、3分の1以上はチームと顔を合わせる機会がいっさいないことがわかった。40%以上の人々が、チームとの対面をもっと増やせば関係を強化できる、と答えているにもかかわらずだ。

 調査では、遠隔勤務者は会社に長くとどまる傾向がきわめて低いこともわかった。「キャリアを通して同じ会社に勤め続ける」と常時あるいは頻繁に考えている割合は、遠隔勤務経験のない従業員の場合は28%だったのに対し、遠隔勤務者の場合はわずか5%だった。長期間にわたり同僚に会わず話をしないと、チームや組織へのコミットメントが下がる。そして、誰も監視する人がいないため、次の職を探し始めるようになるわけだ。