特に今回はインフレ懸念が生じていないわけで、こうした因果関係に当てはまらない。したがって、「過去がこうだったから今回も」と短絡的に考えてはいけないわけだ。

「金融引き締め時の長期金利は短期金利ほどは上昇しない」と記したが、その理由は、「インフレは金融引き締めによって遠からず収束し、それに伴って金融引き締めは終了、短期金利も下がるだろう」と市場参加者が考え、金融引き締めは長続きしないと判断するからだ。

 そうなると、「今後5年の間には、景気過熱による金融引き締めも、景気後退による金融緩和もあるだろうから、短期金利は平均すれば普通の水準となるだろう」ということになり、長期金利は「普通の短期金利+α」となるのだ。

長短金利逆転が原因で
景気が後退する可能性は小さい

 では、長短金利が逆転したことが原因で、景気が後退する可能性はあるのだろうか。理屈上は皆無とはいえない。

 第1に、銀行が長期国債や固定金利長期貸出債権を大量に保有しているとして、短期金利が上昇すると、調達した資金には高い金利を払う必要が生じるが、受け取る金利は増えないので、収益が悪化する。それで自己資本が減り、貸し渋りを余儀なくされるといった場合だ。

 第2に、長短金利の逆転は「景気後退の予兆だ」と考えた人々が投資や消費を手控えるため、実際に景気が後退するという可能性である。また、景気後退を予想した投資家が株式投資を手控え、株価下落による逆資産効果で景気が後退するという可能性も皆無ではない。

 しかし、実際にそうしたことが起きる可能性は、非常に小さいと考えていいであろう。