利上げ続行中のFRBは
景気が後退するとは考えていない

 米国の中立的な政策金利は、2%台後半であるといわれている。これを「普通の短期金利」と考えれば、5年物国債の利回りは、2%台後半+αとなるはずである。そう考えると、長期金利が3%以下というのは、低すぎるのかもしれない。

 その理由としては、「海外投資家が海外の金融緩和を受けて米国債を大量に購入しているから」といった可能性や、「投資家たちが米国経済の長期的な成長性を低く考えて、将来の短期金利を低く予想しているから」、また「米国経済がインフレなき成長を可能とする体質に変化したと投資家たちが考えて、将来の短期金利を低く予想しているから」といった可能性が考えられるが、いずれにしてもそうであれば米国の景気後退を示唆するものではなさそうだ。

 もう1つ、債券市場の参加者たちが、景気の後退を予想しているという可能性もある。2年後には景気が後退して金融緩和が行われていると考えれば、5年金利が2年金利より低くなるのは自然だからだ。

 その場合、長短金利の逆転から分かるのは「債券市場の参加者が景気後退を予想している」ということだけだ。そうしたときに株式市場の参加者が「長短金利が逆転したから景気が後退するだろう」と考えるのは、自分たちの景気予想能力が債券市場参加者より劣っていると認めることにほかならないが、そんなことはないはずだ。

 FRBは、緩やかな利上げを続行中である。ということは、「景気が後退するとは見ていない」という意味だ。もしもFRBが2年後の景気後退を予測しており、しかも差し迫ったインフレ懸念がないのであれば、金融政策が実際の景気に影響するまでのタイムラグを考えて、利上げをやめるはずだからだ。

 それにもかかわらず、債券投資家や株式投資家が「長短金利逆転は景気後退の予兆だ」とするのであれば、それは「FRBが間違えている」と主張するに等しいから、それなりの根拠が必要だ。

「過去に」というだけではダメだ。そんなことはFRBだって知った上で、今回は違うと判断して利上げをしているのだからだ。

 景気後退懸念で株を売るならば、それなりの理由に納得する必要がある。「過去がそうだったから」「債券市場参加者がそう予想しているから」といった理由で株を売るのは危険すぎるといえるだろう。

 もちろん、株価は美人投票の世界だから、短期投資に際して「長短金利の逆転で他の投資家たちが景気後退を予想して株を売るだろうから、自分も先回りして売ろう」と考えるのは自由だが、くれぐれも長期投資家はそうした動きに踊らされないようにしたいものだ。