「上司を立てる」ことは
“ごますり”とは違う

 コーチングアップというのは、「上司を立てる」ということとかなり重なっているかもしれません。上司を立てて組織をうまく回すと、職場の雰囲気も良くなって、自分の仕事もやりやすくなるものです。その結果、自分の仕事の成果も出て、職場全体の成果も上がるという好循環が生まれます。

 しかし、上司を立てることに心理的な抵抗感を抱く場合もあるでしょう。性格的にそういうことが苦手という人も増えているようです。部下を活かせない上司が増えている一方で、上司を立てられない部下も増えているのかもしれません。

 では、上司を立てられないのは、なぜなのでしょうか。大きく次の3つのパターンがあるように思います。

(1)上司をライバルだと思ってしまう
(2)上司との信頼関係ができていない
(3)自分自身の評価を優先して考えたい

 実は優秀な人ほど、こうした落とし穴に陥りやすいものです。上司を立てるなどというと、「媚びる」とか「おべっかを使う」といったことを連想して、嫌悪感を覚える人もいるかもしれません。

 しかし、組織のなかで働いている以上、個人の評価はチームの成績とある程度、連動します。チームの成績が上がらなければ、当然、そこで働く個人の評価も上がらないものです。上司を立てるということは、決して「媚びる」とか「おべっかを使う」といったごますり的なスキルではなく、組織をうまく回し、チームの成果を上げるためのひとつの知恵なのです。

上司を見下す部下は
成長の限界がくる

 上司を立てられないパターンのひとつめは、いつの間にか上司を自分のライバルだと思ってしまっている場合です。

 自分が有能であることを証明したいという欲求が働くと、優秀さをいつの間にか競っていることがあります。「あの上司には負けたくない」、そうした気持ちが強くなりすぎると、WinーWinの関係が築きにくくなります。「あの上司よりもおれのほうが優秀だ」というように、WinーLoseの関係になるわけです。そうすると、上司のアドバイスを素直に受け止められなかったり、指導されたことが悔しく感じられたりすることになってしまいます。