不正の開始時期は調査中。2004年からとの一部報道について、同省は「肯定も否定もできない」としている。不正が始まった原因などについても、調査中という。調査漏れについて、同省の担当部局から根本匠厚労相に対して、昨年12月20日に報告していた。

 同省では、今後発表される昨年11月の確報や来月公表の昨年12月速報は、全対象の調査が間に合わないとみている。調査への協力の有無や従業員数の確認など、対象企業に関する実際調査に時間がかかるためだ。

 今後、いつから全対象企業の調査ができるかもわからないとしており、きょう9日に発表した11月速報値のように、抽出調査した結果に復元作業を加えて公表することになるという。

 同省は「現在行っている調査の報告は、できるだけ早急に行いたい。今月中にも発表できると思う」としている。

 同統計では、昨年1月にもサンプル企業の入れ替えによる前年との給与差額を調整せずに公表し、専門家から賃金の伸びが正確に把握できないとの批判を受けていた。同省ではそれを受けて、前年と同じ対象企業の統計も、参考指標として公表し始めた経緯がある。

 今回の調査漏れが、賃金の実態把握にどう影響するのかー─。

 SMBC日興証券・シニアエコノミストの宮前耕也氏は、大企業のサンプルが本来あるべき数より過少であれば、賃金水準が低く集計され、一方で低水準の金額を分母とすれば、同じ増加額でも伸び率は大きく出る可能性もあるとする。

 このため水準も伸び率も本来の姿とは異なり、現時点で詳細が分からないため「実態把握は難しい」と語る。

 そのうえで、実態把握ができなければ適切な政策を行うことできない、という点が大きな問題だと指摘。「ゆがんだ賃金統計を分析しても、消費や所得の問題点は把握できないまま、増税の議論や対策の議論を行っていることになり、適切な政策が打てているのか判断も難しい」と述べている。

 相次ぐミスに厚生労働省の統計への信頼は、大きく揺らいでいる。第一生命経済研究所・主席エコノミストの新家義貴氏は「今回の件は、ミスという一言では片付けられない悪質な隠蔽。日本のデータの信ぴょう性を著しく損なう問題で論外だ。厚労省のホームページでも、きちんとした説明がなされておらず、事の重大性をどう捉えているのか疑問だ」と指摘した。

(中川泉 清水律子 取材協力:梶本哲史 編集:田巻一彦)

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