誰もが、意義を感じられる仕事に就きたいと思っているはずだ。ただ実際には、同じ会社で同じ上司の下、同じような仕事に従事している人たちを比べても、彼らのエンゲージメント・レベルには大きな差が見られる。筆者らは、職場環境や仕事の性質といった外部要因だけでなく、個々人の性格がエンゲージメントの程度を左右することを明らかにした。


 ほとんどの人は、エンゲージメント(意欲や愛着)を感じられる職、上司、職場を望んでおり、やりがいを感じられる仕事をしたいと思っている。

 こうした願望は、スティーブ・ジョブズの有名な発言にも表れている。「仕事は人生の大部分を占めます。真の満足を得るには、自分が素晴らしいと思える仕事をするほかありません。そして、素晴らしい仕事をするには、自分の仕事を愛するほかないのです」

 これと合致するように、コンファレンスボード(全米産業審議会)の最近の報告によれば、96%の従業員は、仕事へのエンゲージメントを高く維持しようと積極的に努めているという。とはいえ、多くの人は、その実現に苦労しているのだが。

 同様に、科学的証拠によっても、組織の成功にとって最も重要な要素の一つは従業員のエンゲージメントであることが、かなり明確に示されている。エンゲージメントが高い従業員は情熱、エネルギー、やる気の水準が高く、ひいてはそれが業績、創造性と生産性の高さにつながる。このため組織の売上げや利益が増えるだけではなく、従業員の幸福度も高まることになる。

 これとは対照的に、エンゲージメントが低いと、燃え尽き症候群の発生や離職率の上昇、望ましくない職場行動――いじめやハラスメント、不正行為など――を招くことになる。

 したがって、エンゲージメントの主な決定要因を特定するために、膨大な量の研究が行われているのも頷ける。人によってエンゲージメントのレベルに差が生じるのは、なぜか。仕事で刺激や感動、エネルギーを得る人と、そうでない人がいるのはなぜだろうか。

 従来の研究では、状況的要因、すなわち外部要因に焦点が当てられてきた。たとえば仕事の性質、企業文化、リーダーの資質などである。

 従業員にエンゲージメントを抱かせるための普遍的な法則は存在しないものの、人が自分の仕事に対してより意欲的になるのは、一般的に次のような場合だ。意義のある何かを達成するために、期待以上の権限を与えられたとき。他者とのつながりを感じられるとき。そして、職場環境およびリーダーが、公平で、倫理的で、努力に報いてくれる――常にストレスをもたらす環境や人とは対照的な――場合である。

 ただし、こうした外部的なエンゲージメント要因は、重要ではあるものの、人が仕事や上司や職場をどのように捉えるかは、各人の性格特性によって異なる可能性もある。

 実際、「エンゲージメント」の必要性がビジネスの場で議論されるようになる前から、多くのマネジャーは、意欲とは個々人が職場に持ってくるもの、つまり従業員が備えている性格特性の一つと考えていたようだ。だからこそ、職場環境がほとんど同じでも(たとえば同じ会社、同じチーム、同じ上司の下で働いていても)、人によってエンゲージメントのレベルに大きな差が生じうるのであり、どのような環境でも同程度の野心、エネルギー、献身を示す労働力が求められてやまないのだ。

 このことから、これまであまり議論されてこなかった、明らかな疑問が浮かび上がってくる。すなわち、エンゲージメントはどの程度、性格に依存するのか、である。